デビュー作『ションベン・ライダー』から丸40年をまわった俳優・永瀬正敏。製作国や、作品の規模に捉われずに作品を重ねてきた。一見クールに映るその内側に、熱い青の炎を燃やし続けているような永瀬さんのTHE CHANGEとはーー。【第3回/全4回】

永瀬正敏 撮影/有坂政晴

 

 最初に企画が立ち上がってから、実に27年の時を経て新たに作られ、完成し、公開を迎えた映画『箱男』。27年前も、いまも、永瀬さんがまず行ったのは、主人公の“わたし”が入り、世界を覗くことになる、<段ボールの箱>に、実際に入ってみることだった。

「今回も、衣装合わせの前から箱を借りて入っていました。意外とキツイんですよ。微妙なところに覗き窓が付いてるから、下にピッタリ座ってしまうと外が見えないんです。だから少し腰を浮かせて。小さい椅子があればちょうどいいくらいの高さなんですけどね。家に猫がいるんですけど、2人で一緒に入って」

 愛猫家としても知られる永瀬さん。知人の猫を預かった際に、目の前で生まれた子を引き取り、ずっとともに暮らしている。

――猫は段ボールが好きですからね。

「いや、でも彼も、最初はひたすら黙って廊下から様子をうかがってました。“なんか変なのが来たぞ”って。そのうち、箱の中にいる僕の匂いに気が付いて、近づいてきて“入れろ”と言い始めた。それで入れたら、今度は全然出ない。普段はあまり抱っこが好きな子じゃないんですけど、箱の中でずっと抱っこしてました。彼も覗いてましたよ」

――へえ! 撮影前から箱に入ってみるという体験は、27年前にもしていたのですか?

「ロケ撮影する予定だったドイツのホテルでずっと入ってました。そのときに、表現するのが難しいんですけど、中で居心地がよくなってしまう恐怖心が湧いたんです。めちゃめちゃ居心地いいじゃんと思い始めて。それが怖い。外の世界に戻れなくなると困るなと」

――興味深いです。

「それでホテルの部屋のドアを開けっぱなしにしていたんです。スタッフのみなさんとか俳優さんが通ると、“まだ入ってるよ”みたいな感じだったと思います。今回も参加している美術の林田裕至さんが、27年前も一緒だったんですけど、“あのときもずっと入ってたよね”と言われました。当時もいまも、同じことをしています(笑)」