タカラジェンヌといえば、男役はきらびやかな青年、女役はお姫様のようなヒロインを演じているというイメージを持っている方も多いだろう。だが、天真みちるは、宝塚歌劇団でおじさん役を極め「宝塚の佐藤二朗」と呼ばれることもある異色の存在だ。そんな天真さんは退団後に会社員になり、その後、フリーランスとして独立。あまりに多様な「THE CHANGE」を経験してきた。変化を恐れず、常にチャレンジを続ける天真さんの秘密とはーー。【第5回/全5回】

天真みちる 撮影/川しまゆうこ

 天真みちるさんに「人生最大の危機」についてたずねると「3つくらいあるんですけど」という前置きとともに、さまざまな経験をまっすぐに語ってくれた。

「1つは、中学卒業のとき、宝塚の1度目の受験に落ちたこと。2つ目は、全国ツアーなどの選抜に落ちて、3か月休みだったこと」

 3つ目は、天真さんが脚本を担当したとある公演について。

「公演後のアンケートやSNSで、好評の声もある反面、批判の声をいただくこともありました。

 当時はお客様からいただく声すべてに目を通し、受けとめようと必死だったのですが、ふと気づくとお酒を飲みながら泣いてる自分もいて。追い詰められていたのかもしれません。

 ただ自分でも、心の中で胸を張って、“これが私の表現したいことです”とは言いきれない部分がありました。今でもずっと悔しいです」と天真さんは振り返る。