よこじまのハンカチをたてじまにーーでお馴染みの手品師・マギー司郎さん。ゆったりとした茨城なまりのしゃべりで振りまく愛嬌が心地よい78歳は、現在も現役真っ只中で舞台に立ち、よこじまをたてじまに変えている。もうすぐ60年目に突入する芸歴の中に、一体どんなTHE CHANGEがあるのだろうか。【第2回/全5回】

マギー司郎 撮影/有坂政晴

 センスのよいデニム素材の私服から、撮影のためにおなじみの手品師衣装に着替えるマギー司郎さんに、担当編集者がフィッティングのために確保した別室へと案内しようとしたときだった。

「いやいや、ここでいいよ」

 そう言うや、取材場所である応接室でボトムを脱ぎ始める。

「20歳頃の下積み時代は、ピンク映画館の楽屋で、総勢10人くらいで寝ていたりしていたからね。踊り子さんと、マネージャーさんっていうんだけど、要は踊り子さんのヒモですよね。そういうみんなで10日間くらい興行回って一緒に生活するから。着替えくらいどこでだってできますよ。だからね、僕は寝る場所を探すのが得意なんですよね」

ーー楽屋で雑魚寝をするからですか?

「そうです。まずはそのときの劇場の楽屋の間取りを見て、“僕はどこで寝るのかな~”って、探すところから始めるんです。僕がよく狙っていたのは、化粧台の前。狭いけど、横になれるスペースがあるんです。あとは、衣装ラックもいいですね。衣装の下は安全なんです。蹴飛ばされないから。荷物がたくさんあって場所がないときは、舞台に布団を敷いて寝ていました。広い舞台にひとりって、さみしいんですけどね」