あるときは、“鎌倉殿”を支える13人のひとり。あるときは“聖まごころ病院”看護師の父親。またあるときは、“寅ちゃん”と対立する、家事審判所の所長……。その正体は、創立45周年を迎える劇団スーパー・エキセントリック・シアター(以下、SET)で、歌って踊ってアクションする俳優・野添義弘である。長きにわたって、劇団と映像の世界で作品を支えてきた彼のTHE CHANGEとは──。【第3回/全5回】

野添義弘 撮影/有坂政晴

 劇団スーパー・エキセントリック・シアターの団員として劇団の本公演に出演するとともに、映像や劇団外の舞台にも参加するようになった野添義弘は、志村けん主催・主演の『志村魂』でも好演。松竹新喜劇の演目で藤山寛美の役柄に扮する志村の相手役を務める野添に目をとめたのが、人気脚本家で演出家の三谷幸喜

 直々のオファーで、NHKの大河ドラマ鎌倉殿の13人』の安達盛長役を射止める。

「大河ドラマは何本か出していただいているんですが、どれも出番は少なくて。三谷さんが脚本を書かれた『新撰組!』にもワンシーンくらい出てるんですけど、もちろん三谷さんはご存じなくて(笑)。“野添さん、出てたんですねぇ”と驚かれていました」

 クランクインの直前、野添は三谷から一通のメールを受け取った。

「とてもていねいな文章で“安達盛長は、大河ドラマ『草燃える』(’79年)では武田鉄矢さんが演じられていましたけど、今回は野添さんに演じていただくので、こういう感じで……”と書いてあって、やはり三谷さんは役の中に、演じる俳優のイメージを取り込みながら脚本を書いていらっしゃるんだな、と思いましたね」

 撮影に入ると、新しい台本が届くのが待ち遠しくて仕方がなかったという。

「1冊来ると、次はどうなる!? と気になって気になって……。10話で、上総介役の佐藤浩市さんが殺されるところは、小栗(旬)くんや大泉(洋)くんなんかと“どうなるんだ!”と盛り上がり、台本が来たら“いやいや、こうなるのか……すごいな……”と暗くなったり。本当に毎日が充実した撮影だったし、見てくださった方々からの評判も良かった。三谷さんが『志村魂』を見に来てくださって、キャスティングしてくださったことが嬉しかったですね」