人生最期の死ぬときに“よかったな”と思える生き方をしたい

 連載を開始すると、またたく間に拡散されさまざまなメディアが取り上げ、最終話を投稿した2020年3月20日には、フォロワー数が230万人を超えるなど、きくちさんは人生の転機となりうる漫画を生み出した。
 改めて自身の人生の“THE CHANGE”について聞くと、「気づくことですかね」と教えてくれた。

「CHANGE=変わる、ですが、変わる人って、なにかに気づいたから変わることができるんだと思います」

ーーきくちさん自身は、どんなときに、どんなことに気づいたんでしょう。

「バチッと気づいたのは、25歳のときに印刷会社に就職して、会社員になったあとでした。3年目で辞めましたが、きっかけが、気づいたことだったんです。”この会社に60歳の定年までいる”ということを考えたら、“なんだかそれはイヤだ”と気づいて、そうなったらもう辞めるしかありませんでしたね」

ーー当時から絵は描いていたんですよね。

「そうですね。当時でも"もっと早く辞めておけばよかったな”と思っていました。もし同じような人がいるならば、やりたいことがあるなら今すぐにでもやったほうがいい、と伝えたいですね」

 2013年に会社を辞めることを選択した結果、きくちさんは2019年に『100ワニ』でその名が日本中に知れ渡ることになった。きくちさんは、「このときに完全に気づけてよかった」と念を押す。
 そんな気づきは、きくちさんの代表作である『100ワニ』にも反映されている。100日後、自身に死が訪れることを知らないワニくんだが、それは読者も同じである。だからこそ「納得して死ぬために、生きたほうがいいんじゃない? と思うんです」ときくちさんは話す。

「僕は、どうせ死ぬなら、人生最期の死ぬときに“よかったな”と思える生き方をしたいと思っています。これまでいろんな映画や漫画で言われていることだと思いますが、本当にその通りだと思うんですよ。時間はどんな人にも平等で限られているから、やりたいことを今すぐやったほうがいいよ、という考え方は、ずっと前から持っていました」

 マンガ制作の間をぬってやる趣味などはありますか。またネズミとワニの仲睦まじいシーンなどにラーメンがでてきますが、好きな食べ物があれば教えてください。

「友達とご飯を食べに行くときって、“ラーメンいこうぜ”ってなっちゃいます。あとカレーも好きです。あるカレー店さんとコラボしたときがあって、その時いただいたバターチキンカレーとチーズナンの組み合わせが最高だったので、好きになりました。
 趣味はステッカー集めです。今は200枚くらいあって、家の壁に貼っています。壁を埋めて、いずれは天井まで貼りたいです(笑)」