<ある事件をきっかけに音楽活動を封印し、質素に暮らすかつてのロックスター>を描いた映画『はじまりの日』。主人公の「男」を演じた中村耕一さん自身が「半分くらい僕ですね」と語るように、JAYWALKとして大ヒットを飛ばし、自らの事件により一線から姿を消した中村さんのヒストリーと重なる。映画初主演となる本作に挑むことになった思い、そしてそこに重なる「THE CHANGE」は――。【第1回/全3回】

中村耕一 撮影/有坂政晴

 これまで映画出演はもちろん、演技経験もなかったという中村さんに出演オファーをしたのは日比遊一監督。もともとJAYWALKとしての中村さんの活動を観たことはなく、近年のライブでの姿を観てぜひ出演を、と依頼したという。

「申し訳ないですけど、すぐにお断りしました。それはもう、1ミリもない、ゼロです、と。演技の経験もないですし、僕にセリフなんて言えるはずもない。そもそもバンドで活動していた時も、新曲のプロモーションビデオの撮影で監督さんから“こういう演技をしていただけませんか?”と言われても“無理です”と即答してたぐらいですから」

 それでも日比監督は繰り返し中村さんのもとを訪ねられたという。

「その都度、お断りはしていたんですけど、お会いするたびにいろいろ僕のこれまでのお話はしていたんです。もちろん事件のことも含めて。そうしたら何度目かの時に監督さんから“これ一度読んでもらえないですか?”と大まかな台本が渡されたんです。持ち帰って読ませていただいたんですけど、とてもいい話だなと思いました。今まで僕が話したことが反映されているストーリーで、心に響いたんですけど、読めば読むほどこんないい話に迷惑はかけられないので、ますます無理だなと。そうしたら4回目にお会いしたときに、“まず第一にセリフを極力なくしましょう”と言われ、それでグラっときました(笑)。さらに監督が“耕一さんに演じてもらうなんてこれっぽっちも思ってません。カメラの前でそのままでいてくれたらいいです”。“僕は役者を耕一さんに求めてませんから”と。そこまで言っていただいて、やってみようか、と。ご迷惑をおかけしてしまうかもしれないけど、体験しておくのは、僕にとってすごく貴重なものになるかもしれないという思いで、“よろしくお願いします”と返事させていただきました」