法廷のシーンは裁判官の言葉も含めて実際の場面と同じ

 日比監督が、中村さんと話をする中で仕上げていった台本ということで、中村さんご自身のこれまでの出来事に重なるシーンも多い。薬物で事件を起こし法廷で判決を受ける場面もあり、それらの撮影に向き合うのは精神的に厳しいものがあったのではないだろうか。

「いえ、そう感じませんでした。この13年間、あの事件以降、忘れたことはないんです。忘れようと思ったこともないです。忘れたら駄目だなという思いで暮らしてきたので、今回の作品の中でも過去の自分と向き合うのは当然のことだと思いました。僕は事件以降名古屋で暮らしているんですけど、名古屋で本当にいろんな人に助けられました。ミュージシャンの方も、ご近所の方も、そしてもちろん家族も。そういう皆さんの力が僕にとって大きかったので、忘れたら駄目だなというのは常にあって、思い返せるよう…思い返すというか、常に自分に刻むようにしているのは事実なので、今回、監督さんにも洗いざらいいろんなことを話しましたし、描いていただいて構わないと思いました。あの、映画の中で描かれている法廷のシーンは、裁判官の言葉も含めて実際の場面と同じなんです。そのままを知ってもらいたい、という思いもありました」

 出演を決めるまでには葛藤もあったというが、同時に出るのであれば、包み隠さず描いて欲しいという思いもあったという。それだけに中村さんにとって大きな挑戦だったはず。撮影はどんな日々だったのだろうか。

(つづく)

中村耕一(なかむら・こういち)
北海道函館市出身。ヴォーカリストとしてJAYWALKに加入、アルバム『JAYWALK』(1981年)でメジャー・デビュー。「何も言えなくて・・・夏」(1991年)が180万枚を売り上げる大ヒットを記録。同曲で日本有線大賞、日本レコード大賞など受賞。2011年3月JAYWALKを脱退。
2013年よりソロアーティストとしてライブ活動を開始。2017年以降、様々なアーティストと共演し、全国でライブを行う。近年は日本のブルースバンド「OSAKA ROOTS」とのライブなども好評。「歌うことが幸せだ」と数々の名アーティストと年100本以上の全国ライブを周る。

『はじまりの日』
バンド「JAYWALK」の元ボーカリスト・中村耕一が主演を務め、ミュージカル舞台でも注目を集め圧倒的な歌唱力で注目されているシンガーの遥海がヒロインを演じた。
監督/日比遊一 
中村耕一(ex JAYWALKボーカリスト)、遥海 W主演
高岡早紀 山口智充 岡崎紗絵 羽場裕一 秋野暢子 麿 赤兒 竹中直人
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
10月5日より名古屋先行ロード―ショー 10月11日より全国公開

「はじまりの日公式X」https://twitter.com/hajimarinohi_jp
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