出待ちがもたらした人生の転機

ーーもとに戻ってしまいましたが、次はどんなアクションを?

「ミュージカルのことで頭がいっぱいで、CDを聴いたり観劇に連れて行ってもらったり、時間があるときは楽屋口に行って俳優さんの出待ちをしていました。そんなある日、憧れのミュージカル俳優である岡幸二郎さんに声をかけたところ、歩みを止めて手を振っていただきました。憧れの人が自分に手を振ってくれたことが、心から嬉しかったのを鮮明に覚えています。
 その後しばらくして、知人が岡さんの楽屋に連れて行ってくれる機会を作ってくださり、ついにご本人にお会いすることができました。”あの時、あの場所で声をかけました!“と伝えると、岡さんは記憶の片隅で覚えてくれていたようで、僕の相談を真剣に聴いてくれました。そこでミュージカル俳優になりたいという気持ちを伝えると、岡さんが具体的なアドバイスをくださり、夢がより大きなものへと成長しました。この出来事は、14歳の夏の大切な思い出になっています。」

ーー事務所には所属しなかったんですか?

「そういうことは考えていませんでした。学生時代は音楽の基礎を学びながら観劇を続けていて、あるとき岡さんがスーパーバイザーとして関わるコンサートがあり、”出演してみないか?“とお誘いいただき即答で”やります!“と答えました。その結果、念願のデビューを果たすことができました。」

ーー年表を作っていた時代を考えると、ものすごい転機です。

「好きなミュージカルに触れ、歴史を調べてのめり込む中で夢が見つかり、憧れの人と出会い、コンサート出演のお声がけをいただきました。そしてこの世界に入れたことは、本当に運が良かったと感じていて沢山のご縁に心から感謝しています」

 味方さんは以降、さまざまなミュージカルや舞台に出演し、近年では『教場』(フジテレビ系)や『嘘解きレトリック』(同局系)などのドラマでも活躍している。その俳優人生は、思い切り回り道をしたすえのラッキーで始まったのだった。

(つづく)

味方良介(みかたりょうすけ)
1992年東京都生まれ。小学生の頃よりミュージカルへの思いを強め、2011年『恋するブロードウェイ♪』でミュージカルデビュー。以降、さまざまな作品に出演し、12年には『テニスの王子様』2ndシーズンで柳生比呂士役を演じる。16年には『新・幕末純情伝』に出演、翌年には『熱海殺人事件』で木村伝兵衛役を演じ、俳優としての幅を広げた。20年には映像作品に進出し、ドラマ『教場』(フジテレビ系)に出演。近年は映像作品への出演も多く、24年10月期のドラマ『嘘解きレトリック』(フジテレビ系)では、主演の祝左右馬(鈴鹿央士)の親友で刑事である端崎馨役を演じている。