渋い表情で決めると迫力満点の強面なのに、ニコッと笑うと誰もが「エンケンさん!」と声をかけたくなる俳優、遠藤憲一。多面的な魅力を縦横無尽に使い分ける彼が現在取り組んでいるのは、心と身体が“全国民”と入れ替わってしまう、総理大臣・武藤泰山役だ。9年前の2015年に放送されて大人気となった『民王』(テレビ朝日系)の続編『民王R  Inspired by 池井戸潤』に挑んでいる、遠藤憲一のTHE CHANGEとは──。【第2回/全4回】

遠藤憲一 撮影/冨田望

 遠藤憲一が映像の世界に入ったのは、1枚のチラシがきっかけだったという。

「高校を辞めてしまってバイトばかりしていたころに、ふと興味をひかれて劇団に入り、それも辞めてしまったんですけど、21歳のときに自分で企画して、登場人物が2人だけの芝居をやることにしたんです。
 劇場を回って宣伝用のチラシを配っていたところ、渡した相手のひとりが、以前所属していた事務所の社長でした。たった1日限りの公演を見に来てくれて、スカウトしていただいたのが、映像の世界に飛び込むきっかけです」

 若いころから強面だったため、仕事のほとんどは刑事物の犯人役やVシネマの極道役など。しかし、演じることはおもしろく、数多くの作品に出演し続けた。

「40代に入ったころ、ずっと一緒にやってきた事務所のマネージャーが高齢になって引退したいということになったんですね。さてどうしよう……となったとき、女房に頼んだんです。“オレのマネージャーをやってくれないか”って」