”良い子”とは対照的な役にも挑戦

 俳優の仕事を辞めたいと思ったことはなかったそうだが、20代前半の頃はやっていけるのかという不安を抱いていた。

「やっぱり、自分のお芝居に自信がなかったんでしょうね。子役から段々と年齢が上がるにつれて、求められるモノも段々と高度になっていくと感じたんです。でも仕事の充実感というより、それに自分がついていけるのかという不安の方が大きくなって……。なので、お仕事をいただけるのは嬉しいんですけど、期待に応えられているのかすごく不安でした。俳優という仕事は好きだけど、このままやっていけるのかな……と常に思っていたんです」

 子役時代は、セリフを覚えて現場に入れば「よく出来たね」と褒められていたが、徐々にそれだけでは済まなくなってきた。

「やっぱり芸能事務所に入ってからは様々な役を演じさせてもらえるようになり、役の幅も広がっていったんです。それまでの、いわゆる“良い子”だけじゃない部分を求められた時に、自分の引き出しの無さを実感したんだと思います」

 その当時(20代前半)の頃に演じた役で”良い子”とは対照的だったのはドラマ『QUIZ』(2000年4月)での菅井恭子役が当てはまる。『QUIZ』は東京郊外の閑静な住宅街で起きた幼児誘拐事件に挑む警察と犯人のスリリングな犯罪ドラマだ。ここで星野さんが演じたのは誘拐された幼児の向かいに住むひきこもり。誘拐事件を実況生中継するホームページを作成する女子で、母親に憎悪を抱き故に口汚くののしり、摂食障害で笑い方も何かを孕んでいる……といったキャラだった。

「あれだけ振り切っている方が表現しやすかったりもするんです。リアルな日常だったり自分と近かったりする方がかえって難しいんですよね。何気ないセリフや動作、演じるキャラが抱いているモノをほんのちょっとだけみせるというのはお芝居として高度だと思うんです。俳優の世界ってそもそもが答えが無い世界ですので、それが良いのかダメなのかを判断するのは監督なんですよね」

(つづく)

星野真里(ほしの・まり)
1981年7月27日、埼玉県生まれ。O型。T156㎝。幼少の頃から児童劇団に所属しCMやテレビドラマに多数出演。2005年に公開された映画『さよならみどりちゃん』で映画初主演を果たし、第27回ナント三大陸映画祭で主演女優賞を受賞。近作に、『ビリオン×スクール』、『全領域異常解決室』などのドラマや『新生!熱血ブラバン少女。』などの舞台がある。

●作品情報
ドラマ『きみの継ぐ香りは』
https://s.mxtv.jp/drama/kimitsugu/
【放送日時】 毎週金曜よる9時25分より放送中<TOKYO MX>
【配信情報】民放公式テレビ配信サービス「TVer」にて2週間無料見逃し配信

【出演】 星野真里 加藤ローサ
今井柊斗 滝澤エリカ 朝日奈まお 池田良 武田航平 / 原日出子
【監督】 石橋夕帆
【脚本】 下亜友美
【音楽】 近谷直之
🄫 小川まるに/シーモアコミックス 🄫 TOKYO MX