"心霊から逃げよう”と思っていた

 率直に葛藤を吐露するはやともさんは「そっちに手を出した瞬間、お笑いって終わるんです」と、痛いほど自覚していた。

「霊が科学的に証明されないかぎりは、それは絶対に変わらないから。だから僕は、"心霊から逃げよう”と思っていたんです」

 だが、はやともさんのスタイルは求められた。2020年3月に出演した『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)は反響を呼び、同時にiPadでイラストを描き解説する「生き霊チェック」が業界内で評判に。

「給料2万円とかだったのが、メディア露出後に20~30万円に増えて。でも、一過性のものでした。コロナ禍で僕のようなぽっと出の心霊芸人が出る枠がなくなったし、統一教会問題が取り上げられるようになって、さらにテレビに出られなくなりました」

 その頃にYouTubeチャンネルを開設した。「そっちで頑張ろう」と奮起すると、金銭面での不安は解消されていったが、得たものは経済的余裕だけではなかった。

「YouTuberの友達ができたり、より広く芸人の先輩たちと仲良くなって初めて、芸能界以外の場所から“お笑い村”を見たんです。そうすると、それぞれのファンはそれぞれのジャンルにしか行かないことがわかりました。インディアンスさんやレインボーさんのYouTubeにはお笑いのお客さんしかコメントしないし、都市伝説チャンネルには都市伝説村のお客さんしか来ないし。美容系やミュージシャンも同じでした。それまで僕は、"お笑いは大衆演劇で、全国の人にまんべんなく届けることができるエンターテインメント”だと思っていました。でもちがうんだなと。見る側が選ぶ時代になったことを、顕著に実感したんです」

 それに気づいたはやともさんは、「考え方を変えざるを得なくなった」という。心霊から逃げることをやめたのだ。

「いままでは絶対に不可能だったけど、心霊とお笑いをかけ合わせるというスタイルは、意外と通用するかもしれないぞ、と思ったんです。お笑い村以外では心霊ネタでやって、お笑い村に戻ってきたときは、全力で先輩にボコボコにされればいいだけ……という意識改革が起こり、そこから楽しくなりました」

 “視えすぎる芸人”としての活路を見出した瞬間だった。

(つづく)

シークエンスはやとも
1991年7月8日生まれ、東京都出身。吉本興業所属の“霊が視えすぎる”芸人。小学3年の時、凶悪事件の決定的瞬間を目撃したのを機に、幽霊と生き霊がキャッチできるようになる。 デビュー後、iPadで解説する「生き霊チェック」が評判を呼び、芸人仲間から超人気アイドルまで楽屋に行列するように。『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)など多くのバラエティー番組で注目される一方、YouTubeでも人気を集め、『シークエンスはやともチャンネル~1人で見えるもん。~』は登録者数40万人を突破。「心霊に恐怖する時代は終わった」を合い言葉に、霊を知ることで見えてきた幸せな生き方をわかりやすく伝授している。10月17日に最新著書『憑いてる人は痩せません 生き霊「お祓い」ダイエット』を上梓した。