手芸に料理、手作りが大好き

 さて、多趣味なことでも知られる玉鷲。刺繍やビーズ細工、ぬいぐるみ作りなどの手芸、パンやケーキ、クッキーなどのスィーツ作りはプロ級の腕前で、とにかく手先が器用だ。コロナ禍で外出を控えていた頃は、夕食を毎日手作りしていた。

「この前は、刺繍入りのクッションカバーを作ったんですよ。でも、買ったほうがリーズナブルだったかもね(笑)」

 と、気分転換がうまくできているのも、「長持ち」の秘訣のようだ。

 玉鷲に再び優勝のチャンスが巡ってきたのは、22年秋場所のこと。7月の名古屋場所では、同じ部屋でコロナ感染者が出たことで13日目から初めての休場を経験(連続出場記録にはカウントされない)し、宿舎で仲間の力士の相撲をテレビ観戦した。

「精神的にキツかったですね。気力も薄れていくのがわかりました。だから、行動制限が解除された時、『今、できることを全力でやろう!』と気持ちを切り替えたんです」

 こうして臨んだ秋場所は、初日から体が軽快に動いて、5日目、横綱・照ノ富士、6日目には大関・貴景勝を撃破し、12日目に若元春に敗れて2敗目を喫したものの、単独首位は変わらず、最終盤へ。

 千秋楽は3敗で追ってくる髙安を本割で破って、13勝2敗で2回目の優勝を決める。

「初優勝の時は優勝争いのペースがつかめなくて、後半戦は1日中相撲のことを考えて、優勝が決まったときは、心も体も疲れ切っていたんです。でも、この時は『リラックスしていこう』と自己暗示をかけていました。千秋楽の一番は、髙安関が土俵上で緊張しているのがなんとなくわかって、優勝決定戦に持ち込まないよう『一発で決める!』と心に誓って取った相撲でした」