元関脇・青葉城が持っていた通算連続出場記録(1630回)を塗り替え、大相撲に新たな記録を打ち立てた玉鷲。特別なスポーツ経験が無いまま19歳で相撲を始めたという、異色の経歴を持つ。16日に40歳の誕生日を迎えたばかり。そんな玉鷲のTHE CHANGEとは──。【第5回/全5回】

玉鷲 撮影/有坂政晴

 2019年初場所千秋楽。

 「これより三役」の後に組まれた、優勝がかかる、玉鷲ー遠藤の大一番。
 この一番を前に、玉鷲の心は冷静だった。

「昨日(14日目)はガチガチだったんですが、なぜか焦りとか緊張感はなくて、『よーし! ここでやってやるぞ!』といい感じに燃えていました。もし負けても、決定戦で勝てばいい……と」

 立ち合いから、遠藤が低く踏み込んで懐に入ろうとするところ、玉鷲が右からおっつけて突き起こす。そして、遠藤の足が流れるところを、すかさず左からの突き落として、土俵に沈めた玉鷲。この間、わずか2.5秒。玉鷲の初優勝が決まった。

「(表彰式の)優勝インタビューでは、年甲斐もなく『最高です!』と叫んでしまって(笑)。抑えていた感情が爆発しちゃったんでしょうね……。もちろん、この日に生まれた次男に後押しされた部分も大きかったと思います。
 そして何より、34歳でもやれるんだ! と自信になって、自分が生まれ変わった瞬間でもありました」

 玉鷲は感慨深く、当時を振り返る。