1300年以上前の『万葉集』が、いま一大ブームとなっている。社員1人の出版社の代表兼作家の佐々木良さんが、日本最古の和歌集を令和の奈良弁に訳した『愛するよりも愛されたい』が、7刷り9万部という異例のヒットを記録しているのだ。その“奇跡”を生み出した佐々木さんの「THE CHANGE」とはなんだったのだろうか。

佐々木良 写真/本人提供
佐々木良 写真/本人提供

 佐々木さんが、柔和な表情を浮かべながら「よろしくお願いします」とあいさつし、取材はスタートした。出版界でも大きな話題になった大ヒット作を生み出しながらも、まったく気負いやおごりは感じられない。

―『愛するよりも愛されたい』は、万葉集を素材に取りながら、現代語訳の言葉のセンスが秀逸すぎます。「ワンチャンないで」「彦星しか勝たん」など、本当に、こんなことが万葉集に書かれているのだろうか、と気になって、和歌のほうをついつい読んでしまいました。

「まさに、僕の狙い通りです(笑)普通、古典の本って、最初によく分からない歌が載っていて、現代語訳があって、注釈があってみたいになるので、歌の難しさがはじめに立ちはだかりますよね。それだと元歌を詠まないじゃないですか。なので、僕の本では、まず現代語訳を読ませて、なんとなく頭の中にこんなことが書いてあるんだなと分かってもらってから、元歌を詠みにいくと、元歌がさらっと読めてしまうように作っているんです」

―確かに、初めに現代語訳読んで、元歌も読む流れでした。

「現代語訳を読んで、“うそつけ、こんなこと書いてあるんか”と思って、元歌を自分で理解してみようという行動に繋がるんです。なので、古典の本としてはとても画期的です」

―ほんと言葉のセンスがすごいですよね。こうした現代語訳を生み出されていますけど、面白い歌をそもそもどうやって見つけているんでしょうか。