「38歳にして、愛読書は『小悪魔ageha』なんですよ」

「万葉集の歌が先にあって、それを現代語訳していると思われているんですけど、実は逆もあるんです。たとえば、自分が奈良に行って、奈良のスタバの隣の席で、若者が“あの人と付き合えるんちゃうん”と話しているのが聞こえたら、そういうことを言っている歌がないか、って万葉集の中を探すんです。ここ勘違いされがちです。

 半分ぐらいは、現代語のほうから歌を探しています。“ワンチャンないで”という言葉を使いたかったら、それに近い歌を探す、みたいな」

―なるほど。想像を超えた作り方ですね。奈良弁の聖地に行って、常に言葉を収集しているわけですね。他に、若者言葉を集める方法はありますか。

「38歳にして、愛読書は『小悪魔ageha』なんですよ(笑)。ここに“SNSで人気になれば道が開ける”と書いてあったので、万葉集に「歌会で人気歌人になれば出世できる」みたいな歌はないかなと探したりしています。あとは、付箋だらけの『週刊少年ジャンプ』や『りぼん』とか持っています。

 万葉集って、4500首あって、そのうち2500首は恋歌なので、『りぼん』の恋の話とリンクする部分が出てくるんですよ。恋歌は、“私はあなたのことが好きです”と言いたいだけなので、どこかでリンクします 」

 過去と現代を繋げ、古典と流行を融合させる佐々木さんのユーモラスで革新的なアイデアにより、1300年前の『万葉集』が新たな息吹を得て、次世代へと伝えられていくーー。

■プロフィール
ささき・りょう
昭和59年生。京都精華大学芸術学部卒業。大学時代は油絵を専攻。京都現代美術館の学芸員を経て、現在は瀬戸内の文化芸術の研究を中心に活動。自身で立ち上げた出版社・万葉社から令和4年10月に出版した『愛するよりも愛されたい』がベストセラーに。恋歌を現代奈良弁に超訳し、1300年前の情感を引き立てている同書はSNS風の表現と流行語を駆使し、令和時代にフィットする1冊に。7月21日には第二弾『太子の少年』を刊行予定。

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