相手の心を捉えて離さない瞳と、俳優歴10年超えのキャリアで着実に培った演技力。実写映画『ゴールデンカムイ』シリーズのヒロイン、アシリパ(リは小文字)役もピタリとはまり、ますます上り調子の山田杏奈さん。そんな山田さんのTHE CHANGEとは──。【第3回/全4回】

山田杏奈 撮影/松島豊

 映画『新聞記者』『余命10年』、ドラマ『アバランチ』の藤井道人監督の新作『正体』に出演の山田さん。変装と潜伏を繰り返しながら、日本中を巡る指名手配犯・鏑木を、来年のNHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』も控える横浜流星さんが演じるサスペンスだ。物語では、夢破れて地元へ帰り、ケアホーム施設で働く鏑木と出会う女性・舞を演じた。

「ごくありふれた女性というか。だからこそ、私自身もとても共感することがありましたし、きれいごとだけじゃない部分もあると思いました。深く考えずに行動してしまって。 
 そういったうかつさって、みんな持っているものだったりする。だけどそのうかつさによって、大変な事態になってしまう。そのときにどう感じるのか。きっとみんなも心を寄せやすい役だと感じました」

──どんな変化を遂げていくキャラクターだと感じましたか?

「舞はいろいろなことから逃げたり、自分がちょっと苦しくなったとき、楽な方を選択してきた。それも悪いことではないんですけど、でもそういう選択をしてきた人が、鏑木に出会ったことで影響を受けます。
 鏑木の生きようとする力、人を信じたいと思う力、逃げているのではなく、むしろ向かっていっているような、そうした姿に動かされていって、最後には“自分も逃げないようにしたい”と、どうやって生きていくのかをすごく考えて大きく成長していく人だと思います」

──たしかに観客に近い存在です。いわゆる“普通の人”を演じることは、俳優さんにとっては逆に難しかったりしますか?

「私も“普通の人”という表現をしてしまいますけど、どんな役をやるにしても簡単とか難しいとかはないですかね。ただ今回でいえば、それこそ指名手配犯が身近にいるというのは非日常ですけど、それ以外の例えば一般的な家庭で暮らして、ご飯を食べて……といったところは、同じ気持ちではないにしろ、私自身も経験があることです。
 そうした私も送ったことのある生活をしていて、では“彼女と私はどう違うのか”といったことを考えていく作業が、見落としそうなところで大変でもあり、でも楽しさでもあるかなと思います」