シリアスからコメディまで、幅広い作品で唯一無二の個性を放つ俳優、小倉久寛。劇団『スーパー・エキセントリック・シアター』の旗揚げから45年間、三宅裕司と共に歩み続けてきた小倉久寛のTHE CHANGEとは──。【第1回/全4回】
「ぼくがいま、俳優をやれているのは、三宅裕司という人間と出会ったことが、すべてです」
小倉久寛は、きっぱりと言い切った。
「ぼくが大学を卒業するころは、オイルショックの影響で就職難だったんですね。で、どうせ就職ができないんだったら、しばらくは楽しいことをしようかな、とのんきに考えていたんです。ちょうどそのころ、ぼくは中村雅俊さんが演劇青年を演じた『俺たちの祭』(日テレ系)というテレビドラマに夢中で、稽古場でワイワイやって、そのあと居酒屋で演劇論を闘わせたりする“劇団”っていうのが、すごく楽しそうに見えたんですよね」
そんなとき、何気なくページをめくっていた情報誌で『劇団大江戸新喜劇 旗揚げ公演』という文字が目に飛び込んできたという。
「劇団、新喜劇、旗揚げ……並んでる言葉が全部良かったんですよね。なにしろ芝居のことなんて何も知らないから、できたばっかりの劇団が、ドタバタ楽しく騒ぐお芝居なんだと思って、見に行ったんですよ」