着物で歌うという夢は叶ったが…
それでも、毎日毎日、1日に数カ所を回る日々は過酷だった。新幹線で故郷の姫路を通るときに「今、ここで降りたら、明日から楽になれる」と思ったことも、1度や2度ではなかったという。
しかし「きれいな着物で紅白歌合戦に出る」という夢が、彼女の足を止めた。
「祖母が望んだ、着物で歌うという夢が叶ったのは、東京に来て2年目の『新・BS日本のうた』でした」
しかし、東京の事務所に移ってからも、ミニやヘソ出しではないもののドレスで歌ってきた丘には、着物での所作がまったく身についていなかった。
「日本舞踊の舞踊家で振付師でもある花柳糸之先生に、着物での歩き方から指導していただくと共に〝歌の主人公になりきって歌うこと〟を教えていただきました」
きれいな着物を着て、歌の主人公になりきって歌う————。
丘みどりの魅力は、固いつぼみが開いて大輪の花が咲くように、見る人、聴く人をとりこにした。
そして2017年、念願のNHK紅白歌合戦への出場を果たす。
「祖母に“ずいぶん時間がかかってごめんね”と言いました」
以来、バラエティやトーク番組に出演するときも、着物を着続けてきた。祖母の嬉しそうな笑顔を胸に抱いて……。
(つづく)
丘みどり(おか みどり)
1984年7月26日生まれ。兵庫県姫路市出身。11歳から数々の民謡コンクールで優勝。2002年にアイドルデビューするが、演歌歌手への夢を追い求めて2005年に『おけさ渡り鳥』で演歌歌手としてデビュー。2016年に第9回日本作曲家協会音楽祭「奨励賞」、第49回日本作詩大賞「優秀作品賞」を受賞し、2017年から3年連続でNHK紅白歌合戦に出場。2024年12月25日にオリジナル曲とカバー曲を収録したアルバム『JOURNEY』をリリース。
【作品情報】
舞台『おちか奮闘記』
2025年1月2日(木)〜26日(日)
三越劇場
作:川口松太郎(『浪花女』より)
補綴・演出:成瀬芳一
出演:丘みどり
三田村邦彦、河合雪之丞、賀集利樹、松本慎也、瀬戸摩純 ほかhttps://mitsukoshi.mistore.jp/bunka/product/7050900000000000000002982412.html?rid=7b90e5db143c44a3a02acbf947dfdfa0
https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/mitsukoshi_2501/