映画『クライマーズ・ハイ』での一途であるが故に心を病んでしまう新聞記者から、『踊る大捜査線』シリーズでの中国人刑事、はては映画『ひみつのなっちゃん。』でのドラァグクィーン……様々なキャラをこなし、見るものを魅了する俳優・滝藤賢一さん。最近ではCMでのコミカルなアナログ部長が印象的だ。最新出演作、映画『私にふさわしいホテル』では、文壇の大御所作家・東十条宗典を演じ、山の上ホテルを舞台に野心溢れる“新人作家”中島加代子(のん)と権威ある文学賞を巡る攻防を繰り広げ、新境地を見せる。そんな滝藤さんに俳優になるきっかけから“これから”も含めてのCHANGEを聞いた。【第2回/全3回】
21歳の時に俳優養成所「無名塾」の超難関の入試を突破し入塾した滝藤さん。「受かる自信はありましたよ」と滝藤さんは高笑いする。
「あの自信は何だったんですかね。でも『無名塾』に入ってからはそんな自信も木っ端微塵に打ち砕かれました。もう勢いも何もなくなりました。“俺も映画スターだぜ”って思って入ったんですけど。稽古で一歩歩いたら“違う、普通に歩きなさい”って、僕は普通に歩いているつもりなのに。ひと声発したら“聴こえない”とか“ちゃんとした日本語を話しなさい”。これを毎日ですから(笑)。今まで生きてきた僕の21年間を全否定されたかのようでした」
そんな苦汁を飲むような体験をした滝藤さんだったが、何とかそこで持ち堪えた。
「ここで頑張らなかったら、人としてクズだと思ったんです。それまで何となくテキトーに生きてきて、親に東京に行かせてもらって。きっと借金して行かせてくれたんだと思うんです。そういう中で、何か自分で必死こいてやらないと、そろそろヤバいぞ……って時だったんじゃないですかね」