『私にふさわしいホテル』は原作も脚本もメチャクチャ面白かった
「無名塾」で10年間を過ごし、退塾。2008年に公開された映画『クライマーズ・ハイ』で新聞記者・神沢役を好演して注目を浴び、以降多くの作品で様々な役をこなしてきた。最新出演作『私にふさわしいホテル』では白髪に眼鏡と髭といういで立ちのいかにも昭和の文豪然といったキャラを熱演。柚月麻子原作の同名小説の映画化で、監督は『TRICK』、『SPEC』シリーズの堤幸彦。
物語は、東京・山の上ホテルを主戦場に、主人公の新人作家・中島加代子(のん)と滝藤さん演じる大御所作家・東十条宗典が、権威ある文学賞「鮫島賞」を巡って繰り広げる攻防をコミカルに描いている。
「原作も脚本もメチャクチャ面白かったですね。加代子の強欲さというか、しがらみのある文学界に対しての憎悪とか……どの世界にも通じる面白さを感じました。ドロドロした世界でありながら堤さんの演出、のんちゃんや圭君、共演者との芝居を重ねていくとどこか可愛らしく、面白おかしく見えるのが不思議でした」
東十条という小説家は原作からすると、その破天荒というか無茶な感じが筆者にはドラマ『探偵が早すぎる』(2018年・読売テレビ・日本テレビ系)で滝藤さんが演じた探偵・千曲川のイメージに重なった。
「千曲川は人をおちょくったり陥れるのが大好きで、あのひねくれ方は異常ですね(笑)。東十条は、僕の中ではもっとねちっこいっていうのかな。若い世代からの突き上げだったり、今の自分に対して、時代遅れなんじゃないか、古臭いんじゃないかという恐怖を感じている。若さや勢いに嫉妬しているというか、すごく人間の小ささ、孤独さみたいなものを感じましたね」
──演じる上でのポイントは?
「僕はやっぱり、リアクションですね。自分が何かしようというよりは、のんちゃんや圭君がどういう芝居をしてくるのか、投げてくるのか、感情をぶつけてくるのか……というのをしっかりキャッチすることじゃないかと思います。そうすることでリアクションが生まれて、リアクションの中で生まれた感情を返していく……。それは今回の現場に限らず、どの現場でも意識しています。そうじゃないと、自分が考えてきたことばっかりやってしまう。お互いのセッションの中で生まれたリアクションや言葉じゃないと、一方通行というか、感情の説明になってしまう気がします。30年近くやってますが何が正しいのかいまだにさっぱり分かりません。また変わるかもしれないです(笑)」
(つづく)
滝藤賢一(たきとう・けんいち)
1976年11月2日生まれ、愛知県出身。2000年『BULLET BALLET/バレット・バレエ』(塚本 晋也監督)で映画デビュー。映画「クライマーズ・ハイ」(08)で一躍脚光を浴び、以降 数々のドラマ、映画、CM 等で幅広く活躍。主な映画出演作に『踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツら を解放せよ!』(10)、『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』(14)、『64-ロクヨン-前編/後編』(16)、『孤狼の血 LEVEL2』(21)、『ひみつのなっちゃん。』(22)、『ミステリと言う勿れ』(23)、『若き見知らぬ者たち』(24) 、主な出演ドラマには『外事警察』(09)、『梅ちゃん先生』(12)、『半沢直樹』(13)、『君と世界が終わる日に』(21)などがある。
(作品情報)
映画『私にふさわしいホテル』
原作:柚木麻子(新潮文庫刊)
監督:堤幸彦
脚本:川尻恵太
出演:のん 田中圭 滝藤賢一
田中みな実 服部樹咲 髙石あかり / 橋本愛 橘ケンチ 光石研 若村麻由美
特別協力:山の上ホテル
配給:日活/KDDI
2024年12月27日(金)全国公開
🄫2012柚月麻子/新潮社
🄫2024「私にふさわしいホテル」製作委員会
https://www.watahote-movie.com/