青春ファンタジー映画の傑作のひとつとしていまなおファンの多い『ふたり』で、当時若干18歳でありながらも圧倒的な存在感を放った俳優・石田ひかり。1992年秋から93年春にかけて放送されたNHK連続テレビ小説『ひらり』のヒロイン・藪沢ひらりを演じ、国民的な人気者となり、年末の紅白歌合戦では2年連続で司会を務めた。平成を代表するドラマ『あすなろ白書』(93年・フジテレビ系)をはじめ、以後も数多くのドラマ、映画、舞台などで活躍。結婚、出産を経て、近年は母親役としての活躍が多いが、今秋放映されたドラマ『全領域異常解決室』では夜を治める”神様”役が話題を集めた。10代の頃から芸能界に身を置き、様々な体験を経た石田さんのCHANGEについて聞いてみた。【第4回/全4回】

石田ひかり 撮影/有坂政晴

 2001年に結婚し、俳優の仕事から一時期遠ざかっていた石田ひかりさん。厳密にいうと2005年7月に公開されたフランスのドキュメント映画『皇帝ペンギン』の吹き替え版でお母さんペンギンの声を当てられていたが、俳優としての復帰作はドラマ『弁護士のくず』(2006年、TBS系)であった。

「俳優の仕事を再開したばかりの時は台本を読む時間なんてどこにもありませんでしたね。もう頭も身体も「お母さん」から「俳優」に切り替わらない。セリフが一文字も入って来なかったんです。だから、現場で必死で覚えました。それこそ付け焼刃も甚だしい感じで、申し訳なかったです(苦笑)。どうしたって、家のことが7割で仕事が3割。娘たちが学校に通うようになってからはお弁当は絶対に作るって自分の中で決めていて、そこは譲れなかったですし」