本格的な仕事復帰はNHKのEテレ教養番組から

 30代はほぼ子育てに明け暮れ、40代になると──。

「40代になったとき、上の子が小学4年生、下の子は3年生になり、徐々にお仕事を再開しました。NHKのEテレの『にっぽんの芸能』という古典芸能を紹介する教養番組の進行役の仕事が決まって、そこから少しずつ仕事のペースを掴んでいった感じでした」

 現在52歳。50代はまだ始まったばかりだが、ここでも転機となるような大きな出会いがあった。岩松了さんが演出を務めた舞台『青空は後悔の証し』に出演の最中に50歳の誕生日を迎えた。岩松さんと言えば俳優としても多くのドラマに出演。『時効警察』シリーズの課長など“とぼけたおっさん”の印象が強く(もちろん、ちゃんとした……というかノーマルなキャラもある)、そんなイメージしか湧かないが……。

「そうなんですよね(笑)。でも、演出家になると全然違って怖いんですよ。私がほんとに出来なくて、それまで言われたことのない言葉でダメ出しをいただいて。最初は理解するのにちょっと時間がかかったんですけども、理解できるようになったら、もう全てを書き留めておきたい……というような言葉の数々でした」

──なかでも印象に残っている言葉というと?

「“セリフは意味じゃないんだよね、体の状態でしょ”って。言われた当初は意味が判らなかったんですけど、しばらくして“確かにそうだな”と感じるようになりました。岩松さんとの出会いも、私にとって本当にありがたいことでした」