カメラが回っていない間も灯を生き続けた

──おふたりの姿がリアルで圧倒されました。

「本当に、この人が生きるか死ぬかが私にかかっているんだと思って。カットがかかった瞬間に“お願いだから死なないで!”と言いながら、青山さんを離すことができなかったんです。そしたら青山さんが、“金子(灯の名字)は優しいな。ありがとうね、ありがとうね”と何度も言ってくださって。すごく印象に残っています」

──山中さんも、役柄の青山さんのままで言葉をかけてくれたんですね。

「青山さんはあのあと病院に行きましたが、また戻ってきてからか、時間がたってからか、きっと灯に同じ言葉をかけてくれるんじゃないかと感じました。それに、“ありがとうね”と言ってもらえたことで、“そうなんだ、私って優しいんだ”と灯としても気づきがあって。カメラが回っているときだけじゃなく、いろいろなことを感じられました」

──大変なシーンが多かったですが、富田さん自身は大丈夫でしたか?

「お父さんとのシーンでも、スタッフさんたちは、“本当に危なかったら、途中で止めるよ”と言っていましたし、今回、(『心の傷を癒すということ』の)安克昌先生のお仲間の精神科医の先生が、3人入ってくださっていたんです。様子を見に来てくれたり、シーンが終わると“大丈夫? 深呼吸して”と常に気遣ってくれました。なので、現場づくりとして何の不安もない状態での撮影期間でした。内容的には大変でしたが、皆さんとこんなもの作りができるんだという発見のほうが大きかったです」

「発見のほうが大きかった」と言える富田さん。さすがだ。

(つづく)

富田望生(とみた・みう)
2000年2月25日生まれ、福島県いわき市出身。2015年、宮部みゆきの小説を成島出監督が映画化した「ソロモンの偽証 前篇・事件 / 後篇・裁判」にて、1万人が参加したオーディションでメインキャストに選ばれ、俳優としての活動を開始。数多くの映画やドラマに出演している。主な出演作に『チア☆ダン〜女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話〜』(2017)『SUNNY強い気持ち・強い愛』(2018)『私がモテてどうすんだ』(2020)、ドラマ『3年A組 -今から皆さんは、人質です-』(日テレ系)『教場』(フジテレビ系)『だが、情熱はある』(日テレ系)、配信ドラマ『宇宙を駆けるよだか』『ブスの瞳に恋してる 2019』、連続テレビ小説『なつぞら』『ブギウギ』(NHK)など。
ヘアメイク:千葉万理子 Chiba Mariko
スタイリスト:阪上秀平 Sakaue Shuhei
中に着たシャツワンピース\53,900(税込み)PONTI
フリンジワンピース\49,500(税込み)PONTI
その他スタイリスト私物
お問い合わせ先:MAEDA DESIGN LLC. 03-6280-4408

●作品情報
『港に灯がともる』
2025年1月17日(金)公開中
監督・脚本:安達もじり
脚本:川島天見
出演:富田望生、伊藤万理華、青木柚、山之内すず、中川わさ美、MC NAM、田村健太郎、土村芳、渡辺真起子、山中崇、麻生祐未、甲本雅裕
配給:太秦