映画デビュー作『ソロモンの偽証』(2015)における2か月での15キロの体重増というストイックな役作りに始まり、愛らしい笑顔の奥に揺るぎない芯を感じさせる富田望生。2作目のNHK連続テレビ小説出演となった『ブギウギ』でも、個性の強い、主人公スズ子の付き人・小夜を演じ切った。まだ20代半ばながら高い演技力と存在感を放ち続ける富田さんのTHE CHANGEとは──。【第3回/全4回】

富田望生 撮影/有坂政晴 ヘアメイク/千葉万理子 スタイリスト/阪上秀平

 主演映画『港に灯がともる』が公開中の富田さん。主人公・灯の苦しみや葛藤が、痛いほど伝わる作品であり、幾度も胸を締め付けられる。中でも家族と衝突を繰り返す父親役の甲本雅裕さん、灯が働き始める設計事務所の設計士・青山を演じる山中崇さんとのシーン。それぞれと富田さんの2人きりで展開する場面は、演技だと忘れてしまう。

──甲本さんとのアパートでのシーンは、灯が父を訪ね、話して出ていくまでの長回しでした。

「通常、撮影には段取りがあって、そこからテストをして本番を迎えます。お父さんとのシーンは、軽く段取りをして、そこからテストは踏まずに本番でした。“話そう、話せる!”と訪ねたところが1だとしたら、出ていくときには全く違う“10”という数字で出ていきます。
 今回は、ほぼ順撮りで撮影できたので、灯がその場面に至るまでを経験した状態で臨むことができましたが、“1”に戻すまでの時間はすごく大変。カメラを何台も置いて、頭から出ていくところまでを1回戦で撮りました」