共演の田口トモロヲに大きな刺激を受けた

 二人が移住してきた村の自治会長・田久保に扮したのは田口トモロヲ。夫婦生活に過剰に干渉してくる物語のキーパーソンだ。

「最初に台本を読んだ時には、どなたが自治会長の田久保役を演じるのかまだ決定していなかったんです。私は登場人物やその情景を思い浮かべながら台本を読むんですが、実際に撮影が始まって田口さんと対峙した時に、田口さんが演じられた田久保さんはの引き出しには全くない人物像だったんです。すごく刺激を受けました。とても活き活きと楽しく演じられていて、一緒のシーンでは次はどんなモノが飛び出すんだろうって、私もちょっとドキドキと楽しみにしていました」

 NHKのドキュメンタリー『プロジェクトX』でのナレーションをはじめ、マルチな才能を発揮する田口。昨年公開された映画『アイミタガイ』では少し気の弱い、どこにでもいるサラリーマンを演じ、レモンサワーのCMでの陽気なキャラも印象的だが、今回はまさに怪演という言葉が当てはまる。

「田口さんと共演させていただくのは初めてでしたが、実際にお会いしてみると本当に物腰が柔らかくて、とても優しくてユーモアがある方でした。元々パンクバンドを組まれていたということは存じ上げていたんですが、田久保を演じている時の田口さんにはその時のパンクさが土台にあるのを感じました」

村の自治会長の田久保役を演じる田口トモロヲ (c) 2024映画『嗤う蟲』製作委員会

 夫・輝道役の若葉竜也とは2019年に公開された映画『愛がなんだ』でもカップルを演じている。

「若葉さんと御一緒させていただくのは2回目で、久々にお会いしたんですが全然変わっていなくて(笑)。すごくナチュラルなお芝居をされますし、本当にフラットな方なんです。全然飾らなくて、誰に対しても嘘がないというか……とても信頼できる俳優さんです。一度共演経験があったので、不安なく夫婦のやり取りが出来ましたし、自然な空気感も出せたかなって思います。映画を観てくださった方が夫婦の会話に親近感や日常をリアルに感じてもらえるように、“ここは変えた方が聞き馴染みが良いかな”というように監督と3人でセリフ回しの相談もしました」

 撮影中は映画にピッタリの怪異譚が起きたとか……。

「これはクランクアップした後に聞いた話なんですが、じつは若葉さん、泊まっていたホテルで幽霊を見たらしいんです。夜中にふと目が覚めてドアの裏側の鏡を見たら、知らないおじさんが座っているのが映っていたとか。“うわっ、ヤバイ!”と思って目をつぶっていて、しばらくして開けたらいなくなっていたらしいんです、若葉さんはその後すぐホテルを変えて、みんなが怖がると思ったから撮影中は言わず、終わった後に教えてくれました」

──深川さんは心霊体験はなかったんですか?

「私は霊感が全くないので。だから逆に良かったです(笑)」

 霊感はないという深川さん。着実に俳優としてのキャリアを積んでいるが、不思議と「3」と「5」の数字に縁があり、転機が訪れているのだという。

(つづく)

【衣装クレジット】
スタイリスト/山口香穂
スカート¥33,000/リツコ カリタ  https://ritsukokarita.store/
リング¥17,600/アペルディエム(アテンション・ジャパン・プロダクツ 03-5724-3730)
その他スタイリスト私物

 深川麻衣(ふかがわ・まい)
1991年3月29日、静岡県生まれ。2011年、アイドルグループ「乃木坂46」の第1期生オーディションに合格。2017年、舞台「スキップ」で 初主演 。2018年には主演映画『パンとバスと2度目のハツコイ』で TAMA 映画賞最優秀新進女優賞を受賞 。主な出演作として、『愛がなんだ』(19)、『水曜日が消えた』(20)、『今はちょっと、ついてないだけ』(22)、『パレード』(24)などの映画や『アイのない恋人たち』(24)、『イッセー尾形の週末父娘』(25)などのドラマがある 。映画『おもいで写眞』(21)、『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』(23)では主演を務め、昨年は舞台「他と信頼と」、朗読劇「ハロルドとモード」などでも活躍の幅を広げている。

映画『嗤う蟲』
出演:深川麻衣 若葉竜也 松浦祐也 片岡礼子 中山功太 / 杉田かおる 田口トモロヲ
脚本:内藤瑛亮、城定秀夫
監督:城定秀夫
配給:ショウゲート
2025年1月24日(金)より全国ロードショー
🄫2024 映画「嗤う蟲」製作委員会
https://waraumushi.jp/