昨年秋場所途中で現役を引退。175センチ、165キロの小柄な体で、2018年九州場所、小結で初優勝。得意の突き押し相撲を磨き、大関昇進後も優勝を重ねた貴景勝。引退後は年寄・湊川を襲名し、NHK大相撲解説も好評の親方の「THE CHANGE」とはーー。【第3回/全4回】

湊川親方 撮影/有坂政晴

 2018年九州場所14日目、ここまで1敗で単独トップを走っていた小結・貴景勝は、2敗の大関・髙安と対戦。

 この一番で勝てば、優勝が決まるという戦いで、髙安は大関の意地を見せて、引き落としで勝利。優勝の行方は、翌日に持ち込まれることとなった。

 そして迎えた千秋楽。

 貴景勝は平幕・錦木と対戦し、5秒ほどで、錦木を土俵に沈め、2敗をキープした貴景勝は、支度部屋に引き上げた。

 結びの一番。2敗の髙安と御嶽海の戦いは、長い相撲になった。お互いフィリピン人の母親を持つ、ハーフ力士。この場所、大関取りのチャンスを逃した御嶽海だったが、この相撲を制したのは、25歳の御嶽海だった。

 髙安が敗れ、初優勝が決まった瞬間、支度部屋で待機していた貴景勝は、設置してあるテレビに背を向けていた。

「優勝が決まったことは、付け人から聞かされました。表現の仕方は少し違うかもしれませんが、『優勝が転がり込んできた』ような感覚で、自分が自分じゃないような気分でしたね。
 表彰式を終えて、支度部屋の風呂でシャワーを浴びていた時、手が震えているのがわかりました」