画面のどこにいても、どうしても追う目が止められずに引き込まれ、喜怒哀楽を刺激される俳優・佐藤二朗。ドラマ『勇者ヨシヒコシリーズ』(テレビ東京系)をはじめとするコメディでの活躍が思い浮かぶ一方で、近年は監督・脚本を務めた映画『はるヲうるひと』(21年)や、第14回TAMA映画賞で最優秀男優賞を受賞した主演映画『さがす』(22年)など、観る者を震撼させる凄みを放つ。コメディからシリアスまでその才覚を発揮し、コラム集『心のおもらし』(朝日新聞出版)を上梓するなど、多方面で活躍する佐藤さん。一筋縄ではいかなかった俳優道での『THE CHANGE』とはーー。

佐藤二朗 撮影/川しまゆうこ 

「あなた、ヘンタイじゃないですか。いきなりあなた……“男性器”なんて単語を出してあなた……」

 記者を前に、呆れたように笑う佐藤二朗さん。

 遡ること数分前。6月20日に上梓した『心のおもらし』(朝日新聞出版)の装画を担当した漫画家・新井英樹さんのファンで、「『ザ・ワールド・イズ・マイン』はバイブル。“最近の自分、ちょっとぬるいな”と思ったときに読み返す」と話す佐藤さんに対して、女性記者もファンであることを告げて、「私は『ザ・ワールド・イズ・マイン』の登場人物の中で、メモ帳に男性器ばかり描く新聞記者が好きです」と打ち明けると、冒頭の呆れ顔に至ったのである。

佐藤「『ザ・ワールド・イズ・マイン』は、松尾スズキさんが単行本の帯に『セリフが凄い。劇作家としてこのセリフに負けたくない。しかし新井英樹は絵までが凄いのだ!!』と書いていますが、本当にその通りです。キャラクター作り、セリフ、そして絵もカット割りもできるって、すげえなと」

ーー佐藤さんも同じく、独特で魅力的な言葉の選び方や視線を持っていらっしゃいます。

佐藤「そうですか、ありがとうございます」

ーー『心のおもらし』は、コラムの合間に、佐藤さんが書かれたドラマ『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』の脚本や、未発表の脚本の一部も掲載されて、とても贅沢です。

佐藤「本を作ろうとしたとき、“付録的に、俳優仲間との対談を収録するという方法もあります”と提案されましたが、“もうそれなら脚本を載せましょう”と私が言い出しまして。いま、3作目の監督作を撮れるように動いていますが、映画ってなかなか成立しないことも多いんですよね。そんな脚本が何作かあったので、載せてしまおうと」

 本編となるコラムは、2018年から現在も続く『AERA dot.』の連載『こんな大人でも大丈夫?』から厳選したものだ。そもそもなぜ、コラムを書くに至ったのだろうか。