美術館で「展覧会」を開催!
「絵を美術館で見せるっていうことをやり始めたのがこの時からです。イラスト集の刊行に合わせ、初めて本格的な展覧会を開催したんです。そうしたら結構な数の人が観に来てくれて…。これは、本当に大きなことで、その後の「彼女」展へも繋がっていきました。
いまの自分の仕事が確立したのは完全に『KING OF POP』からです。あれは要するに漫画もイラストもひっくるめて僕の画業の集大成という形で出したイラスト集なので、構成も全部自分でしたし、いまでもかなりいい出来の画集だと思っています」
300点以上の原画を展示した『江口寿史展 KING OF POP』は、2015年の北九州市漫画ミュージアムを皮切りに全国の美術館で巡回展を行ない、各地で大盛況となった。お金のない時期に自らの原画を売って凌いできた江口さんだったが、この画集と展覧会によって起死回生、完全復活を果たしたのである。
「あの画集を出して、全国で展覧会をやって、それからまたイラストの仕事が増えたし、漫画を描いてなくても怒られなくなりました。それまでずっと怒られてましたからね(笑)。漫画描かないでイラストでお茶を濁してるやつってツイッターとかでもそういう見方でした。でも2015年の『KING OF POP』以降、それがなくなったんです。今はイラストの方がメインです。漫画家やってたことを知らない世代も絵でファンになってくれてるっていう感じですよ」
こうしてイラストレーターとしての地位を確実なものとした江口さんは、新たなステージに入る。2018年からスタートした江口寿史イラストレーション展『彼女』は、金沢21世紀美術館を皮切りに全国各地を巡回し、計12万人を超える人々を虜にした。
江口 寿史(えぐち ひさし)
1956年生まれ。熊本県出身。1977 年「週刊少年ジャンプ」にて『恐るべきこどもたち』で漫画家デビュー。『すすめ!!パイレーツ』『ストップ!!ひばりくん』などのヒット作を生み、斬新なポップセンスと独自の絵柄で漫画界に多大な影響を与える。80 年代半ばからはイラストレーターとしても活躍。漫画連載当時のファンから、イラスト作品や CD ジャケット画で知った若い世代まで、幅広い支持を集める。近年は全国で積極的にイラスト展を開催するなど、幅広い分野で活躍を続けている。