イラストレーターとしての大きな転機は『KING OF POP』
イラストを頑張ろうと決意した江口さんは、2015年に大きな転機を迎えた。『KING OF POP 江口寿史 全イラストレーション集』(玄光社)の刊行である。このイラスト集は、江口さんの38年にわたる「イラストレーションの仕事」ほぼ全てを網羅し、大きな反響を呼ぶ。まさに「THE CHANGE」であった。
「漫画家としては、ある程度の評価をいただいてたとは思うんですが、イラストに関してはその頃あまり知られていなくて。けっこう前からやってはいたんですけど、どちらかというと、“イラストばかり描いて漫画はどうした”、といった意見が多かった。「デニーズ」はすごく人目に触れたんですけど、それ以降のイラスト仕事はマニアックな人しか知らないですから。
つまり、それまでの僕のイラストの仕事っていうのはあまり多くの人の目に届いてなかったんですよね。よっぽど僕を追ってきているコアなファンの人は知っているけど、一般的な人にとっては「デニーズ」で終わっている感じ。『KING OF POP』では、これまで僕が描いてきた漫画も含め、イラスト、単行本のカバーとかCDジャケットとか広告で描いた絵、つまりデビュー以来の画業を全て集めたんですけど、それを見た人は“江口寿史ってこんなに仕事していたんだ”と、皆さんビックリしたんだと思います。そしてその内容を展示で見せる『KING OF POP』展を全国8ヵ所でやったことが、それにさらに拍車をかけた。そこからイラストレーターとしての再評価が始まったというか、風向きが大きく変わりました」
『KING OF POP』は、これぞ江口寿史の集大成!!として、マンガがらみの扉絵や表紙用の絵、ポスター用の絵、カードの絵も初めて掲載。『すすめ!! パイレーツ』『パパリンコ物語』『ストップ!! ひばりくん! 』『エイジ』『ひのまる劇場』などの名作から、目にする機会の少なかった貴重なカットの数々を一堂に集め、掲載作品数は約850点、2冊組の総ページ数はなんと430ページを超えた。