2014年から放映されたセゾンカードのCMで頭突きによる瓦割りを披露し、一躍世間の注目を集めた俳優、武田梨奈。琉球少林流空手道月心会で黒帯二段の実力の持ち主で、日本では数少ない本格的なアクションを見せられる俳優のひとりだ。空手を活かしたキレのあるアクションは海外でも評価が高い。近年ではアクション以外の作品にも多く出演し、2015年の放送開始から今年で10年を迎える人気ドラマ『ワカコ酒』(テレ東系)では、シーズン1から主人公の村崎ワカコを演じ続けている。そんな彼女の人生におけるターニングポイント、「THE CHANGE」について話を聞いた──。【第3回/全3回】

武田梨奈 撮影/有坂政晴 ヘアメイク/村澤柚香  スタイリスト/吉岡ちさと

 セゾンカードの頭突きでの瓦割りCMが話題になった頃に公開された主演映画で『祖谷物語 ―おくのひと―』という作品がある。徳島・祖谷を舞台に大自然に囲まれた人々と都会からやって来た青年の交流を描いたヒューマンドラマで、武田さんは祖谷に住む女子高生・春菜を演じた。

「私はアクション作品とアクションのない作品とで、お芝居に区別はつけていなかったんですが、当時、周りはそうは見てくれませんでした。やっぱり、アクションものってジャンルもの扱いされがちだったんです。例えば、学園もののオーディションに行った時に“あなた、アクションの人なのになんで来たの?”って訊かれることもあって……。私としては“アクションも含めて全てお芝居って表現なのに……”という疑問もあった時期だったんです。だから、この『祖谷物語』という作品は、私にとってはひとつの挑戦になるんじゃないかって思いました。“観ていただく方はどのように受け入れてくださるのだろう?”と。そういう意味では私が俳優をやっていく中で大きなターニングポイントになった作品だと思います」

 この作品は2013年に公開され、第26回東京国際映画祭「アジアの未来」部門にてスペシャル・メンションをはじめ、多くの映画賞を受賞した。

「この『祖谷物語』で戴いた『日本プロフェッショナル大賞』の新人賞は自分の中ですごく大きかったです。それまではお芝居で作品に携わっていてもプロ意識がどこか希薄だったように思うんです。でも、この賞を戴いた時に初めてプロとしての自覚を持って俳優として頑張っていこうと思えたんです。やっと認めてもらえた、背中を押してもらえた、映画界の一員としてスタート地点に立てた、そんな瞬間でもありました」