海外作品への出演で芽生えた大きな目標

「最初はインドネシアの『BUSIDO SPIRIT』というアクション作品でした。当時は不安しかなかったですね。英語も全く喋れなくて、どうコミュニケーションを取ったら良いんだろう、と。でも、ひとつの作品を作っていく中で言葉や文化の壁というものはなく、撮影ではみんなでひとつになって出来ました」

 とはいえ、現場での撮影方法(スタイル)の違いはあった。

「日本では撮影が押してくると、“飯押し(食事を抜いて次の現場に行く)”とか“短縮めし(食事の時間を削る)”とかいうことがあるんですけど、インドネシアではどんなに撮影が押しても1時間なら1時間キッチリゆっくり食べましょうって(笑)。開始時間が7時だったら日本は7時きっかりに始まりますけど、向こうだとむしろ絶対に始まらない(笑)。のんびりしているというか、せかせかしていないんです。それから、日本ではクランクインの前にヒット祈願をしますけど、向こうでは毎日、撮影前にお祈りの時間があって、それがすごく新鮮な体験でした」

 現在はフィリピンの作品を撮影中だという。現場には台本がなく、セリフもほぼアドリブに近い。与えられた環境の中で芝居をしなくてはいけないそうだ。

「つまり、その役として生きなければいけない、如何に私生活を役と共に生きられるかということがすごく大事だと思い、髪も切りました。本来そうあるべきだなってことに気付かされたんです」

 海外作品に携わるようになって、やはり痛感したのは言葉。そこで時間がある時は語学留学に勤しむようになってきた。

「もちろん現場には通訳の方がいますが、やっぱり直接的に監督や共演者の方とコミュニケーションを取ったり、ディスカッションしたりして作品作りをしたいと強く思うようになったんです。2年ぐらい前から英語を習得するために短期ですが定期的に語学留学に行っていて、なんとか日常会話はこなせるようになってきました。そのおかげで海外の作品に携わるきっかけが増えてきたんです。環境が私を変えてくれたんだと思います」

 真田広之さんが主演、プロデュースを務めた『SHOGUN 将軍』がゴールデングローブ賞をはじめ多くの賞を受賞し、世界的にも日本の映像作品に注目が集まっている。アクションはもちろん、俳優として大きな成長を遂げた武田さんだからこそワールドワイドにどんな活躍を見せてくれるか、楽しみでしかない。

武田梨奈(たけだ・りな)
​1991年6月15日生まれ。神奈川県出身。AB型。T157㎝。10歳の時に空手道場に入門。琉球少林流空手道 月心会黒帯を持つ。2009年に映画『ハイキック・ガール!』 (西冬彦監督)で主演に抜擢される。その後、2013年には『デッド寿司』に出演し、テキサスのFantastic Film Festival 2012にて主演女優賞、第1回ジャパンアクションアワードのベストアクション最優秀賞(女優)を受賞。2014年、『祖谷物語-おくのひと-』では、第24回日本映画プロフェッショナル大賞新進女優賞受賞。その他の主な出演作に、映画『いざなぎ暮れた。』、『ジャパニーズスタイル』、『室町無頼』ドラマ『封刃師』、『ミラー・ツインズ』、NHK連続テレビ小説『虎に翼』などがある。

【作品情報】
ドラマ『ワカコ酒 season8』
BSテレ東にて毎週水曜日 深夜24:00~、
テレビ東京にて毎週火曜日 深夜2:35~放映中。
(c) 新久千映/コアミックス
(c) 2025「ワカコ酒8」製作委員会
公式サイト https://www.bs-tvtokyo.co.jp/wakako_zake/