18歳で女優デビュー、順調な滑り出しだったが……

 デビューは高校卒業後の18歳。1983年にアイドル歌手としてデビューし、翌年には大映テレビのドラマ『不良少女とよばれて』(TBS)のヒロインを演じ高視聴率獲得の一役を担うなど順調な滑り出しだったが、20代に入ると環境が一変した。いとうさんは当時のことを「地獄だった」と話す。

「20代のとき、けんか別れのような感じで事務所を辞めてしまい、その後この世界で生きにくい状態を自分で作ってしまったんですね。でもそのときはそうなるとは思わなくて。基本的にそれまではずっと主役などをやってきていたので、辞めるときに事務所の社長から“この業界で仕事ができなくなるよ”と言われても、“いやいや、そんなことはないでしょう”と思っていたんです」

 事務所を辞めると、社長の言葉通り状況は一変し、「主役なんて夢のまた夢」になった。

「とはいえ、まったく仕事がないわけではなくて。たまに2時間ドラマや時代劇のゲストの仕事をやらせてもらっていました。そうすると、“番組のスタッフから好かれなくては”と思うんです。たとえば現場で監督さんにあいさつをしたとき“もっと大人っぽい子がよかったんだけどね”なんて言われて口も効いてもらえないとか、そういうこともありました。すごく辛くて、仕事がほしいから、じゃあ大人っぽくすればいいのかなと思って、ダークな色の服を着てメイクを濃くしたり、髪を伸ばしてパーマをかけたり……」

 本来の自分を押し込め、好かれたい・また使ってもらいたいという一心で「そんなことばかり繰り返していた」と振り返る。

「でもね、結局全然うまくいかないんですよ。大きな理由は、私自身の自分らしさがまったくないからです。当時はそれに気づかずにしがみつくような日々を送っていました」