■「“チェンジ”の時代に来たんじゃないかなって思います」
「最近知ったことで愕然としているのは、アメリカが今回の戦争でどれだけ儲けているかという話です。天然ガスをロシアが遮断してしまって、それでアメリカがEUに4倍だか5倍という値段で送りつけている。軍事産業でもアメリカが全部支援して、戦争はウクライナにさせている。
今週の『Newsweek』で知ったのは、プーチン氏がブーメラン効果でワグネルみたいな民間の軍事組織に悩まされているということ(注:取材はワグネルの武装蜂起10日前に行われた)。右翼が徹底的に力をつけてきちゃって、プーチン氏は実を言うと、このところだんだん物を言えなくなってきているといいます。大問題なのはプーチン氏が死んだら、今度は本当の意味でのならず者集団がロシアから出てくるかもしれないということ」
地球環境だけでなく、政治情勢に宗教などさまざまな問題を作品に取り込んできた富野監督。現在の戦争について「メディアも変わらなければならない」と警鐘を鳴らす。
「本当は放置しちゃいけないんだけど、メディアは平気で“この戦争はあと10年は続く”って書くよね。オールドタイプもいいとこで、物を考えるっていうところにいってない。
今回のロシアの戦争が持っている“場”。新しいものに遭遇すると、やっぱりチェンジせざるを得ない。あなたたちメディアはなんとなく芸能人の騒動ばっかり追いかけたり、“スイーツ食べに行きましょうよ”みたいな話だけではなくて、やっぱり“チェンジ”の時代に来たんじゃないかなって思います。
こういうことはぼくのような世代でないと喋れないから、こういうことをお話しいたしました。以上です!」
『機動戦士ガンダム』が生まれて2024年で45周年を迎える。厳しい言葉の中でも、未来の子どもたちへ目線を送る富野由悠季氏が、現在の問題を見つめた上で手がける“次の作品”がどのようなものになるのか、楽しみに待つファンは多いだろう。
■プロフィール
とみの・よしゆき
1941年、神奈川県小田原生まれ。アニメーション映画監督・小説家。日本大学芸術学部映画学科卒。64年、虫プロダクションに入社。『鉄腕アトム』の脚本・演出を手がける。その後フリーに。79年に『機動戦士ガンダム』、80年に『伝説巨神イデオン』ほかの原作・総監督として作品を生み出している。2014年に『∀ガンダム』以来14年ぶりとなる新シリーズ『ガンダム Gのレコンギスタ』をスタート。2019年から2022年にテレビシリーズを再構成した映画5部作劇場版『Gのレコンギスタ』を公開。斧谷稔名義で絵コンテ、井荻麟の名義では作詞を手がける。