■「ファンを喜ばせようと思って作れるほど器用でもない」
ーー7月14日に公開された宮崎駿監督の最新作『君たちはどう生きるか』が大変注目されていますが、富野さんの次の作品の構想はあったりするのでしょうか?
「この歳でそんなものあるわけがないじゃない」
ーー富野さんのファンはどうしても気になるところだと思います。
「ファンはそれほど馬鹿じゃないと思いますよ。あなたは職業柄でそういうことを聞いていると思うんだけど、ぼくはファンを喜ばせようと思って作れるほど器用でもないんです。
ぼくは宮崎さんみたいに、原作を見つけることができないから、そういうものを持ち出してくるセンスがなく、自分のオリジナルのアニメの仕事しかやれないんです。つまり世界が狭い人間なんですよ。そういうところで生きてきた人間が、80歳を過ぎてそれ以上の何かができるだろうなんて欲を持つわけがないじゃない。以上です!」
ーーありがとうございます。
このインタビューは東京・杉並のバンダイナムコフィルムワークスの社屋「ホワイトベース」の会議室で行われた。
会議室エリアの壁にはシャア・アズナブルの横顔が描かれ、フロア入口にはガンダムのモニュメントが飾られており、2024年で放送開始から45周年を迎える『機動戦士ガンダム』の功績と歴史をまざまざと感じさせられる。
叱咤や怒気の中に笑いを織り交ぜながら、1時間半にわたってノンストップで語ってくれた富野監督。そのあまりにもエネルギッシュな姿に、新たな作品を期待してしまう。
■プロフィール
とみの・よしゆき
1941年、神奈川県小田原生まれ。アニメーション映画監督・小説家。日本大学芸術学部映画学科卒。64年、虫プロダクションに入社。『鉄腕アトム』の脚本・演出を手がける。その後フリーに。79年に『機動戦士ガンダム』、80年に『伝説巨神イデオン』ほかの原作・総監督として作品を生み出している。2014年に『∀ガンダム』以来14年ぶりとなる新シリーズ『ガンダム Gのレコンギスタ』をスタート。2019年から2022年にテレビシリーズを再構成した映画5部作劇場版『Gのレコンギスタ』を公開。斧谷稔名義で絵コンテ、井荻麟の名義では作詞を手がける。