■「機動戦士ガンダムを作るうえで意識したこと」
ーーまずご自身が新しいアニメの作り方を見せたかったという意味でしょうか。
「そうです。30分の公共の時間をもらって発表するものを作るというときに、“オリジナルのものが作れるんだ”という場を見せたかった。そういう自己顕示欲がすごくありましたね。
“ガンダムだったら富野だぞ”ということを見せつけたかった。そうすることで原作に縛られない、つまり漫画家が考えている、小説家が考えている、そうしたものとは違う世界のものが“アニメ発”で打ち出せると考えたわけです。
だから『機動戦士ガンダム』を作るうえでかなり意識をしたのは、巨大ロボットが出てくるアニメに、映画になるようなメッセージ性を付け加えるということ。そうでなければ“人口が増えすぎて”とか“コロニー落とし”とかそんな大仰な話が出てくる作品を作る気になりませんもん。
でも他の漫画家はそういうことを思いつかないし、SFを読んでも、ハリウッドでもこんな話はなかった。だったら作って見せると、そういうおごりたかぶりの気分が『ガンダム』を作るときにはあったんです」
ーー巨大ロボットもののアニメで人の意識を変える、というお気持ちがあったということで?
「一人前になりたかった。そうでないと、テレビアニメというものが、かわいそうだろうと思ったんです。『ドラえもん』や『サザエさん』に匹敵するようなものは、巨大ロボットものではなかったから、それを作りたかったわけです。
テレビアニメっていうジャンルを、幅広く、厚いものにしたかったんです。そういう意味で、自己顕示欲が強かったんでしょうね」