完成した作品は我が子のよう

──以前、お話を伺ったとき、編集作業がお好きだとお話されていました。

「編集作業もそうですし、そのあと、実際に完成した作品を、いろいろな人に見てもらいますよね。苦労して完成した我が子のような作品を、みんなが喜んで笑ってくれたりするわけです。そうすると、その我が子がどんどん愛おしくなっていって、“もうひとり、もうひとり作品作りたいぃ!”となるんです。でもやっぱり制作は苦しくて“もういやだ!”と思うんですけど、作品が出来上がると、また“作りたい!”と。

──(笑)。実際これまでに、公開中の『かなさんどー』含めた長編3作と、10編以上の短編があります。

「みんな僕の子どもを“かわいい、かわいい”、つまり作品を“面白い”と言ってくれる。そうすると、どんどん“じゃあ、次の子も”となるわけです。そこにつながっていった最初の作品なので、やっぱり僕のチェンジは『刑事ボギー』ですね。ただ、我が子はかわいいけれど、どこかで自分自身は映画監督にはなりきれていないというか、しっくりきていない部分があったのも事実で、そこから大きなチェンジがあったのが、長編2作目の『洗骨』を作り上げたときでした」
(照屋監督の長編映画デビューは09年公開の『南の島のフリムン』。ゴリ名義で脚本・監督を務めた。『洗骨』(18)は本名の照屋年之名義で監督。第60回日本映画監督協会新人賞に選ばれた)

──映画を撮ったことのチェンジではなく、映画監督としてのチェンジ。

「そこで初めて監督になれた気がしたんです。それまでは、どこか何となくの感覚で指示したり、なんとなくの感覚のまま台本を完成させて編集していたところが正直あったと思うのですが、その後も短編を撮り進め、本数と経験を重ねてきたなかで、ちゃんと冷静に役者やスタッフに指示をしながら、まとめあげられるようになりました。映画って、とにかく大人数で動きますよね」

照屋年之(ガレッジセール・ゴリ) 撮影/冨田望