「お客さんの反応が、やはりいちばん自信と確信を持たせてくれる」
──そうですね。
「監督は不安な顔を見せてはいけないので、僕も常に自信ある“風”に指示していたんですけど、心の奥では不安だったんです。“ひょっとして間違っているんじゃないかな”とか、“こんなの面白くないだろう”“へったくそな演出だな”なんて思われてたらどうしようと、隅っこにあったと思います。でも『洗骨』では、ちゃんと自信を持って指示ができて、作品を撮れている実感があった。出来上がった作品も間違いがない、という確信が持てました」
──『洗骨』は海外でも評価されました。
「モスクワ国際映画祭でも上映されて、食文化も言葉も、住んでいる土地も全く違うロシア人が、同じところで笑って同じところで泣くんです。それを見たとき、自分自身が表現者として、ひとつチェンジした実感がものすごくありました。その後もポーランド、ハワイ、トロント、上海、韓国といろいろな都市の映画祭で上映していただいて。みんな笑って泣いてくれたと聞きました。お客さんの反応が、やはりいちばん自信と確信を持たせてくれます」
──そしてその後も撮り続けた。
「そうです。かわいい我が子を。『NAGISA』や『演じる女』と続いていって、自信を持って、しっかり腰を据えて、こうして長編3作目の『かなさんどー』も撮ることができました」
強い瞳に、これからも4作目、5作目とかわいい我が子を紹介し続けていく照屋監督の未来が見えた。
がれっじせーる・ごり(てるや・としゆき)
1972年5月22日生まれ、沖縄県出身。映画監督・芸人・俳優。1995年に川田広樹とお笑いコンビ「ガレッジセール」を結成。2006年から映画監督のキャリアをスタートし、初監督作品になる短編映画『刑事ボギー』でショートショートフィルムフェスティバルの話題賞を受賞した。2009年『南の島のフリムン』で長編監督デビューを果たす。2018年、本名の照屋年之名義で監督・脚本を務め、奥田瑛二を主演に迎えた映画『洗骨』は、モスクワ国際映画祭、上海国際映画祭などの映画祭に出品。日本映画監督協会新人賞を受賞するなどの評価と、観客からも高い支持を集めた。長編監督最新作『かなさんどー』が公開。
●作品情報
映画『かなさんどー』
2025年2月21日(金)全国公開
監督・脚本:照屋年之
製作総指揮:福田淳
主題歌作詞・作曲:前川守賢
歌唱指導:古謝美佐子
出演:松田るか、堀内敬子、浅野忠信 ほか
公式サイト: https://kanasando.jp/