演じた僕が見ても“こいつヤベえ奴じゃん”って

──今回、演じた若松については?

「僕的にはもちろん、DVなんて糞ヤローですけど(笑)、台本を読んですごく真面目な人間だと捉えました。結構、実直であるが故に色々と上手くいかなくなって、その発散できる拠り所が嫁しかいなかったんでしょうね。それで、DVなんて悪い方向に行っちゃったんだなって。そういう意味ではちょっと可哀想な奴だなって思いました。だから、実際に演じた時もそんなに悪い感じを出していなかったと思うんですね」

──田中征爾監督からもそういう注文があったのですか?

「そうですね。そういう指示はあったと思います。普通の人として演じて、それが作品の中でちょっと悪い風に見えたら良いなぐらいの感じでした。悪い部分を抑えて演じたというか。それが却って難しかったです」

唐田えりか演じる綾に迫る元夫・若松(喜矢武さん) (c) 2024 映画「死に損なった男」製作委員会

 劇中2回の殺陣のシーンもこなした。最初は夜の屋外で関谷に向かってバットを振り回し追い掛け回した。

「あれはなかなか激しかったです。最初の屋外での撮影の時に一度テストで撮ったのをモニターで見せてもらったんですけど、若松ってメチャメチャ怖いなって思いましたね。いきなり影からバットを持って現れて急に走ってくる。それは演じた僕が見ても“こいつヤベえ奴じゃん”って思ったくらい。普通に人生送ってきたら、こんなことを見る機会もないし、やる機会ももちろんないですから」