すっとその場に溶け込み、重心のある色気を放つ。第93回キネマ旬報ベスト・テン主演女優賞などに選ばれた『火口のふたり』や、第31回日本映画批評家大賞主演女優賞ほかに輝く『由宇子の天秤』など、スクリーンに愛されてきた瀧内公美。このところはテレビドラマでも引っ張りだこ。年々輝きを増す瀧内さんのTHE CHANGEとは――。【第2回/全3回】

瀧内公美 撮影/冨田望 ヘアメイク/くどう あき スタイリスト/佐々木 悠介

 最新主演映画『奇麗な、悪』が公開の瀧内さん。一軒の古い洋館を訪れたひとりの女性が、幼少期に起こした事件の告白にはじまる壮絶な半生を語り出す。78分間の長編を、瀧内さんのひとり芝居で魅せ切る本作。観客は、彼女が語る物語へと引き込まれ、1時間強をその中で漂うが、演者にとっては難しいことこの上ない役に違いない。

「自分のなかで、まだこの作品を消化できていないんです。正直、やりきった感みたいなものがいまだにありません」

 たったひとり放たれ、与えられた“自由”も難しさに輪をかけた。

「一瞬の自分の反応にしろ、映り方にしろ、今でいう伏線回収みたいな、観客の方が最後まで観たときに“ああ、こういうことか”みたいな分かりやすいものがある作品も多いですよね。でも映画には、そういったものは特には必要ないと、私は思っています。ただ今回は、”自由に動いていいよ”という演出でしたので、自分の行動すべてを計算しなくてはならない。結果として、意味がないことをやっていたとしても、その過程を追っている観客は少なからず、意図を探し始める。だから、それをどこまで入れるかはすごく考えました。入れすぎると観客心理として、“あの行動の意味はなんだったんだろう”となってしまう。でも何も起こらなければ、ただ女が1人で喋っているという風になるので、心情に合わせてその行動に意味をもたらすことが果たして出来るのか、その塩梅が非常に難しかったです。普段はある程度の制限のあるなかで探していくことが多いです。そうした作業は好きなのですが、完全に開け放たれた中で、“自由に動いていいよ”と言われて見つけていくのは、本当に難しい」