「演じるのは相当ハードだろうなと感じました」

――今作で演じたのは、古いアパートに住み、ときに奇声を発する謎の老人・阿久津勇です。阿久津をどのようにとらえ、撮影に臨まれたのでしょうか。

「脚本を読んだとき、阿久津は自分で自分のことを罰している、心を閉じたキャラクターだという印象が強烈にありました。準備稿の段階では、最初のシーンが、踏み台にのって自ら命を絶つところからだったんです。それが失敗して転倒した目の前にたまたま古新聞があり、シニア劇団の記事が載っていて、演劇に出会うといった設定だったんですよね。 なので、最初から許しを求めるために生きることを選択しているような人物だと思ったので、演じるのは相当ハードだろうなと感じました。

 あとは、自分の罪滅ぼしのために一夜限りのリア王を演じるのですが、一度人生に挫折した落伍(らくご)者が、役に憑依し、迫真に迫ったリアを演じるという設定なんです。これは、正直“ハードル高っ!”って感じましたね。」

――1話の中で、阿久津が隣に住む女子中学生から「なんでそんなになってもまだ生きているの?」と言われたシーンでは、どんな思いがわきましたか?

「言葉にするのは難しいのですが、阿久津は“自分はもう生きている価値がない”と思っているくらい自分で自分を責めている人なので、彼自身も“なぜ生きているんだろうね”くらいな思いなんじゃないかな。生きたくないのにまだ生きているんだけれど、自分が許しを求めている女性に対して“許されたい”という思いだけで今はなんとか生きている。とにかく“贖罪”の思いだけで生きてる感じです」

内野聖陽 撮影/冨田望