「僕は役者に飛躍の余地をくださる方の演出の方が楽しい」
――今作の監督・脚本を務めていらっしゃる大森寿美男さんとは、99年の「黒い家」で、初めてご一緒され、その後、NHK大河ドラマ「風林火山」、ドラマ「どこにもない国」に続く4度目のタッグとなります。
「4回目と言っても、監督の大森さんと出会うのは今回が初めてなんですよ。作家・大森さんとのお仕事は何度もしているけど、監督としての大森さんというのはどう出てくるかと、戦々恐々としていたんです。自分で書かれた脚本を演出されているから、強烈なビジョンを持ってらっしゃると思うし、深いイメージに基づいて演出されるので、要求があまり具体的ではないんです。そこが難しかったところではありますが、具体的なディレクションを出す方よりも、役者に表現の余白を与えてくれるディレクションを出してくれる方が、自由度が増すんですよね。なので、僕は役者に飛躍の余地をくださる方の演出の方が楽しいんです」
――役者さんにある程度委ねていらっしゃるのですね。
「委ねられすぎてちょっと不安になることもありましたし、期待に応えられたかどうかは分からないですけど(笑)。特に後半、リアを演じている阿久津が迫真の演技をみせるシーン。僕の中では、彼の過去の罪とそれがどうリンクするのかがよく分かっていないところがあったんです。
だけど、大森監督の中ではすでにビジョンができているから、“私も精いっぱい頑張りますが、間違っていたり違う方向だったりしたら言ってください“とお伝えしながらできたので、そこは助かりました。それに、試写を見て納得できた部分もあったんです。“そうか、そういうことか”と切り取り方に合点がいったシーンでした」
取材までに試写を見ることができたのは第1話のみだったのだが、内野さん演じる阿久津勇という人物にすっかり取りつかれてしまった。なぜ彼はこれほどまでに偏屈で、そして「リア王」を演じることになるのか。そして恐らく、阿久津をはじめ、アパートの隣人母娘やシルバー劇団員たちも絡んで、『連続ドラマW』らしい重厚な展開になっていくことを、一視聴者として期待したい。
取材・文/根津香菜子
うちの・せいよう
1968年生まれ、神奈川県出身。NHKのドラマ「街角」でデビュー。2021年に紫綬褒章を受賞。近年の主な出演作に、NHK連続テレビ小説「おかえりモネ」、「ブラックペアン2」(TBS系)、映画「春画先生」、「八犬伝」、「アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師」、舞台「芭蕉通夜舟」がある。
作品情報
『ゴールドサンセット』2月23日(日・祝)放送・配信スタート
毎週日曜22時※第1話無料放送(全6話)
出演:内野聖陽、小林聡美、中島裕翔、三浦透子、毎田暖乃/和久井映見
坂井真紀、六平直政、安藤玉恵、有薗芳記、津嘉山正種、益岡徹/風吹ジュン
原作:白尾悠「ゴールドサンセット」(小学館刊)
脚本:大森寿美男
監督:大森寿美男 清水勇気Ⓒ白尾悠/小学館 ⓒ2025 WOWOW INC.