現在、35歳の岡田将生。2025年はデビューから19年目になるが、役者として脂が乗ってきたことは、このところの活躍から誰の目にも明らかである。映画『ゆきてかへらぬ』では文芸評論家・小林秀雄役に挑んだ。タッグを組んだのは、『探偵物語』『ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~』の名匠であり、大学理事長の顔も持つ根岸吉太郎監督。邦画界を背負っていく岡田と、1974年に映画界に飛び込み、後進の育成も続ける監督が、THE CHANGEを語る――。【第2回/全4回】

『遠雷』『ウホッホ探検隊』『雪に願うこと』の名匠・根岸監督が、『ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~』以来、16年ぶりとなる新作として、ふたたび名脚本家・田中陽造とタッグを組み、大正から昭和初期を駆け抜けた、才能あふれる3人の若者の青春譚『ゆきてかへらぬ』を世に放った。
詩人・中原中也(木戸大聖)と文芸評論家の小林秀雄(岡田)、そして彼らと二等辺三角形のような関係を続けた女優・長谷川泰子(広瀬すず)。3人の若き日のうごめきを切り取った本作を完成させた根岸監督には、現在、映画監督という“表現者”としてだけでなく、東北芸術工科大学の理事長という、若者たちを育てる“顔”もある。
根岸監督自身は、早稲田大学第一文学部を卒業後、日活に就職。そこから映画界への道がスタートした。しかしこの第一歩には、『ゆきてかへらぬ』で初めて根岸監督と組み、取材に同席していた岡田将生さんもビックリの、人生におけるCHANGEの瞬間があった。
根岸監督「もともと映画を作りたいなとは思っていました。だけど、僕らが大学を卒業するころには、まずは撮影所に入って、助監督を長くやって下積みを頑張ったあとに、やっと監督になるなんて時代じゃないと感じていた。世界を見れば、テレビとかコマーシャルとか、インディペンデントの映画の作り方とか、いろんなところから映画が生まれていました。撮影所という考え方はいよいよ終わりだなと思っていた時に、自分はたまたま入っちゃったんです。