「心の中では留年したいと思ってたんだけどね」

 僕は早稲田大学に通ってたんだけど、当時の早稲田は留年したら、次の年は、残った単位の分だけのお金を払えばよかったんです。今は知らないですが、当時はそれでよかった。僕は語学の単位を2単位残してたから、じゃあ、もう1年大学をやるのがいいなと。

 来年のために試験だけ受けておこうと思ったんだけど、授業に出てないから当然ひどい点数なわけ。そしたら何日か経ったころ、おふくろから電話が来て“先生が来いと言っている”と。嫌だったんだけど、2回留年してるやつから、“顔だけは絶対に出しておけ”とアドバイスされたものだから、行って。そしたら“この点数はなんだ!”とひどく怒られまして。“自分がバツをつけたら、キミは留年するんだよ”と。こっちは心の中では留年したいと思ってたんだけどね。

 今にして思えば、卒業の年なわけだから、先生からすると、きっと僕も就職が決まっていて、“でも単位を落として留年になんかなったら、すべてを台無しにしてしまうよ”という気持ちだったんだと思います。いまは僕も大学側にいる立場だから、気持ちも分かります。

 ただ、怒っている先生に対して“落としてもらってもいい”みたいに言ったら“お前みたいなやつが毎年ひとりくらいいて、本当に困る。お前の顔を来年も見たくないから出ていけ!”って、ヒドイ点数なのに合格にしてくれちゃったんだよね(笑)。