“お母さん”星由里子さんからの愛ある指導
俳優としての演技だけでなく、当時10代だった田中さんにとっては一つ一つの経験が学びの場だった。
「着替える時間もままならなくて、走りながら着替えてたんですけど、廊下に長椅子があってそこに俳優さんたちが座られてるんです。バタバタって走りながら、その長椅子の前を走り抜けるんですけど、“前失礼しますでしょ”って星さんに言っていただいて、“あ、そうだ”と思ってもう1回戻って“前失礼します!”と言い直して通ったり(笑)。決してピリピリしてるんじゃなくて、そうやって一つ一つお母さんに……星さんをお母さんと呼んでしまうんですけど、お母さんに人としてのマナーとか、基本を教えていただいたなと思います」
朝ドラヒロインという大役を経て、次々に新たな作品に声もかかるようになる。ただ、そこで戸惑いの中に陥ってしまう。
「里見さんがおっしゃったように、厳しいときはきましたね。一つの作品を作るというのは、ただ“楽しいね”だけではいかないというのを身をもって感じました。最初からメインのお仕事をやらせていただいて恵まれていたので、自分はとってもありがたかったんですけれど。
顔が大人びていて20代前半にも見られなかったせいか、俳優として未経験のことはたくさんあるのに、“もう経験しているでしょ”と思われて、“これできるよね?”という感じでお願いされることが多かったんです。