これまで執筆した原稿用紙を積み上げると、御本人何人分の高さになるのかーー。80年代から90年代にかけて「月刊北方」と呼ばれるほど多くの作品を生み出し、最近では御年77歳で2018年から続いた『チンギス紀』の最終巻である17巻を上梓、今年は1月から5月まで伝説の剣豪小説『日向景一郎シリーズ』を5か月連続刊行する。精力的に生き続ける作家・北方謙三さんのTHE CHANGEとは。【第2回/全5回】

北方謙三 撮影/冨田望

 たとえば悩める若者がネット上で鬱屈を吐露したとすると、折りに触れ登場するフレーズがある。

「ソープに行け」

 起源は雑誌『ホットドッグ・プレス』(講談社)で1986年から2002年まで長期連載していた作家・北方謙三さんによる人生相談『試みの地平線』。1988年7月25日号に掲載された「初体験がスムーズにできません」という悩みに対する回答「ソープに行け」が、後世に語り継がれる名言となり、いまなお多くのファンを有する。

「2010年頃に『にしやがれ』(日本テレビ系)に出て嵐の悩みを聞くというコーナーに出ていましたが、あれはディレクターが"あの人生相談のファンです”というので、“ああいう仕事がしたい!”となり、俺に嵐の連中の悩み相談をさせたんです」