4回くらいしか言っていないと思います
ーー人生相談史上もっともインパクトがありキャッチーで、現役読者でなくても知っているほどです。
「もちろん、“ソープに行け”とだけ言ったわけじゃないですからね。そんな変な奴じゃないですよ。ちゃんと前後があるんです。童貞だという男の子が手紙をくれました。“僕は童貞だけど、みんなに羨ましがられます。なぜかというと、いつも隣にかわいい幼馴染がいるからです。でも友達なんです。友達でいる間は側にいられるけど、好きなんです。でも、何もできないんです。どうしましょう?”とさ。まず童貞だと書いてあるから、"それは童貞を捨ててこい”と。でもそれだけだと回答にならないんです。”どうやったら捨てられるんですか?”と聞いてくるんだから」

そうして出たのが、「ソープに行け」だった。北方さんは「間違ったことを言ったとは思わないな」と続ける。
「俺は、童貞を捨てる場所を教えてあげなくちゃと思っただけなんですよ。その言葉が独り歩きしていますが、4回くらいしか言っていないと思います」
ーー令和のいま、そういった相談がきたら同じように答えますか?
「同じでしょう。俺は16年間人生相談をやったけど、1年目も16年目も悩みは同じでしたから。なぜかというと、『ホットドックプレス』は16歳から19歳までが読者層で、60万部出ていたから、その世代の男の子たちはみんな読んでいたんです。で、卒業していくと、新入生が入ってくるわけです。そういえば、“アイバンクに登録しろ”と答えたこともありました」
ーーアイバンクですか。自分の死後に病気等で目が不自由になった方へ角膜を移植することについて、生前に提供の意思を示す「献眼」ですね。
「死にたい奴がいるわけですよ。ただ死ぬのはもったいないから、アイバンクに登録してから死ねと」
ーー「死にたい」という相談もあったんですね。
「そんなのばっかりですよ」
なかには「本当に死にそうな奴」もいたという。そんなとき北方さんが言うのは「アイバンクに登録してから死ね」ではなかった。
「俺と約束しろ。本を50冊読んで、まだ死にたいと思ったら、あと50冊読め。その次が100冊だ。100冊読んでも死にたかったら、俺んところに来い」