あの人生相談は俺にとってもよかった
童貞にソープを勧めるときも死にたい若者に読書を勧めるときも、北方さんの熱量はまったく同じだった。常に真摯に向き合っていた。
「あの人生相談は俺にとってもよかったんです。その頃はもうそこそこおじさんになっていたし、若い奴らの感性に触れることが出来ていたから。若い奴が何を考えて何を感じているのか、とかね」
ーー作品に活かされることもあったんですね。
「いつ20歳の青年を主人公に書かないといけなくなるかわからないし。いまだってそうですよ。だから、人生相談をやめてしまってからはどうしようと思って、しょうがないからさ、若い奴らが集まるライブに行ったりしたこともありました。いろんなライブに行って、ダイブもしました」
ーーダイブ、年齢問わず危険ですよね!?
「下北沢のシェルターでやりました。観客が俺を持ち上げてそのままステージに連れていかれて、“落とすなよ! 落としたら死ぬからな!”とか言いながら。そういうことを絶えず知っていたいんです」
若さへのリスペクトが端々に滲む北方さんの言葉は、だからこそ若者に響くのではないだろうか。
(つづく)
北方謙三(きたかた・けんぞう)
1947年10月26日生まれ、佐賀県出身。1970年、「明るい街へ」で作家デビュー。1983年に『眠りなき夜』で日本冒険小説協会大賞、吉川英治文学新人賞受賞し、以降さまざまな文学賞を受賞。2013年には紫綬褒章を受章した。代表作はハードボイルド小説『檻』『逃れの街』や、『武王の門』を始めとする歴史小説、中国史の長編作品『水滸伝』『三国志』。『試みの地平線』(1988年)はいまなお語り継がれる人生相談界の雄。
【作品情報】
北方謙三、伝説の剣戟小説、日向景一郎シリーズ5カ月連続刊行
風樹の剣<新装版> 日向景一郎シリーズ 1 定価:968円 (本体880円) 発売中
降魔の剣<新装版> 日向景一郎シリーズ 2 定価:880円 (本体800円) 発売中
絶影の剣<新装版> 日向景一郎シリーズ 3 定価:968円 (本体880円) 発売中
鬼哭の剣<新装版> 日向景一郎シリーズ 4 予価:990円 (本体900円) 発売中
寂滅の剣<新装版> 日向景一郎シリーズ 5 完 予価:1,034円 (本体940円) 5/14発売