参考にしたのは団鬼六さん
ーー以前ほかのインタビューで、濡れ場は『花と蛇』などで知られる団鬼六さんを参考に書かれたとおっしゃっていましたね。
「はい。団さんはわりとかわいがってくれていました。普通のSM小説は、最初から女を裸にしてビシビシと鞭で打ったりするわけですが、ところが団さんの場合、15冊くらいかけて1人の女を少しずつ少しずつやっていって、最後の最後に縛り上げて快楽の叫び声をあげさせるんです。でも団さんが本当に書きたかったのは、『真剣師小池重明』や『往きて還らず』とか、そういう小説じゃないかな」

前者は将棋ギャンブラーの評伝、後者は特攻隊と女性との悲哀の物語である。
「そういう小説を出すとき、団さんは出版記念会をやるんです。そうすると、半数が“そういう人”が来るんですよ」
ーーアウトローがたくさん来るんですね。
「そう。あるとき会に呼ばれて行くと、団さんが紫色の袋に入ったドスを抜いて、"これ、◯◯組長が持っていたやつ。いっぱい血を吸ってんだよ”なんて言って。それで俺に“やる”と所持許可証と一緒に渡してきたんです」
ーー北方さんがドスを預かっているんですね。たしか、別荘には真剣もお持ちだったかと思います。
「ドスは気持ち悪くてあんまり抜きたくないんですよね。真剣は全部別荘に置いてありますが、あなた、苦しいことはある? 辛くて死んでしまいたいことはありますか?」
ーー今はありませんが、昔はありました。
「そういうとき、連絡をくれたら抱き首で落としてあげる」