2008年に洸平名義でメジャーデビューし、以降、舞台を中心にテレビや映画など多数の作品に出演。近年は、エッセイの執筆や番組のMCを務めるなど、多岐にわたって活躍している松下洸平さん(38)。昨年放送のドラマ「放課後カルテ」や、ミュージカル「ケイン&アベル」で主演を務め、待機作には26年の大河ドラマ「豊臣兄弟!」が控えるなど、ここ数年、主演から重要な役目といった大役を任されることが増えている。そんな松下さんにとって転機となった言葉や、自身が言葉を発するときに込めた思いなどを聞いた。【第2回/全4回】

松下洸平 撮影/有坂政晴

 淡い萌黄色のジャケットをはおり、春のそよ風のような爽やかな装いで取材部屋に現れた松下洸平さん。「THE CHANGE」のシンボルでもある砂時計を持ったポージングをお願いすると、手のひらに乗せてみたりひっくり返してみたりと次々と楽しそうに応えてくれた。そんな松下さんにとって「CHANGE(変化・転機)」となった大先輩からの言葉や、最近発見した「小さな変化」を語ってもらった。

――今回出版した対談集『じゅうにんといろ』でも、さまざまな人からの言葉に影響を受けたと仰っていましたが、松下さんが「あの時、あの人に言われた言葉で変われたな」と思ったエピソードを教えてください。

「僕は若いころ、舞台を中心に活動していて、そのときに俳優の吉田鋼太郎さんとご一緒したことがあるんです。その時に鋼太郎さんが仰っていたのが『どんな作品に入る時も“自分には何もない”と思うことからスタートすることを心がけている』ということでした。

“そう思うことで、いつまでも自分に対しておごることなく、まっさらで新鮮な気持ちで作品や役に入れる”という言葉が、当時の僕の心にとても響きました」

――その言葉は、その後の松下さんにどんな変化をもたらしたのでしょうか。

「そのお話を聞いてからは、僕も何か作品が始まる度に“自分には何もない。だからこそ、一生懸命取り組めば、例え誰かから心無い言葉を投げかけられたとしても、それに対して過剰に反応することなく、この仕事を長く続けることができる”と思うようになりました。その言葉にいつも支えてもらっていますし、今でも大切にしている考え方です」