2008年に洸平名義でメジャーデビューし、以降、舞台を中心にテレビや映画など多数の作品に出演。近年は、エッセイの執筆や番組のMCを務めるなど、多岐にわたって活躍している松下洸平さん(38)。昨年放送のドラマ「放課後カルテ」や、ミュージカル「ケイン&アベル」で主演を務め、待機作には26年の大河ドラマ「豊臣兄弟!」が控えるなど、ここ数年、主演から重要な役目といった大役を任されることが増えている。そんな松下さんにとって転機となった言葉や、自身が言葉を発するときに込めた思いなどを聞いた。【第4回/全4回】

松下洸平 撮影/有坂政晴

 今年の3月には、約7年ぶりとなるミュージカル「ケイン&アベル」の主演を見事に務めあげた松下洸平さん。松下さんが演じたウィリアム・ケインは、物事を冷静にとらえる判断力を持ちながら、その胸中に熱い情熱を秘めている役どころ。「あて書きではないか」と思わせるほど、松下さんに通じるものを感じた。そこで今回は、自身の「俯瞰力」について語ってもらった。

――今回の対談やエッセイ、これまでのインタビューなどを拝見すると、松下さんはご自身を俯瞰して見ていらっしゃるなと感じます。その根底にあるものは一体何でしょう?

「今の僕の性格を形成しているもののほとんどは、幼少期にあると思っています。僕の家はあまり裕福ではなかったのですが、子どものころは自分の置かれた境遇を選ぶことはできないので、そのことを嘆いていても仕方がないと思って。

 その渦に巻き込まれてしまうと、足元をすくわれて、そこから出てこられなくなってしまう気がしたので、幼いながらに“これは考え方を変えていかなければいけない”と思い、“そうか、うちはいま余裕がないんだな”と今自分が置かれている状況をどこか俯瞰して見たんです。そのときに自分のことをちょっと俯瞰して見る力を身につけたのかなと思います。

 僕は今でもこの家に生まれて本当に幸せだなと思っているし、個人的に苦労したことはあまりないですが、きっと親は大変だったと思います」